黒沢清が描く戦国心理ミステリー「黒牢城」美術、撮影、音楽――“黒沢組”精鋭スタッフ陣のこだわりとは?
2026年6月13日 08:00

黒沢清監督の初の時代劇「黒牢城」が、6月19日に公開を迎える。このほど、本作を時代劇の枠を超えた「戦国心理ミステリー」へと昇華させた、映画界の精鋭スタッフ陣によるオフィシャルコメントが披露。黒沢組の圧倒的なこだわりと、本作の魅力を紐解いていく。
舞台となるのは、織田信長に反旗を翻し籠城作戦を敢行した武将・荒木村重(本木雅弘)が治める有岡城。四方を敵に囲まれ孤立無援となった城内で巻き起こる数々の不可解な怪事件。事件を解明するため村重が向かった先は、織田軍の使者として謀叛を止めるよう説得に訪れたところを監禁した、危険な天才軍師・黒田官兵衛(菅田将暉)のいる暗い地下牢だった――。
(C)米澤穂信/KADOKAWA (C)2026映画「黒牢城」製作委員会「閉ざされた巨大な密室」を表現するため、本作では松竹京都撮影所のスタジオ内に大規模なセットを建立。美術を手掛けたのは、「燃えよ剣」をはじめ、日本アカデミー賞常連のベテラン・原田哲男。「時代劇」を知り尽くす原田は、本作の撮影にあたり黒沢監督から撮影前にある“特殊なオーダー”があったことを明かす。
こだわりは広さだけではない。原田は当初、本作を白黒で撮りたかったという黒沢監督の意向を汲み、セット全体の色味についてもこだわり抜いた。
「題名が“黒牢城”でしたからね。それほど派手にせず、黒っぽい方がいいかなというのはありました」と語る原田。きらびやかさではなく白と黒のコントラストを意識。広大でありながら不気味なモノトーンの空間からうまれる、密室心理サスペンスとしての緊迫感を極限まで引き立てた。
(C)米澤穂信/KADOKAWA (C)2026映画「黒牢城」製作委員会「Cloud クラウド」に続き黒沢監督とタッグを組み、監督同様に自身初の時代劇に挑んだ撮影監督の佐々木靖之。東京藝術大学大学院映像研究科の教授を務めていた黒沢監督と師弟関係にある佐々木だが、撮影前にはどのようなイメージを共有していたのか。佐々木は次のように振り返る。
そんな佐々木が今回最もチャレンジしたというのが、クレーンを使った大胆な空間移動撮影だ。セット内に櫓(やぐら)を実際に建てるなど極力CGを使用せず行われた撮影において、佐々木は、「地下牢はすごく広いんですが、クレーンを入れてしまうと狭い場所になってしまう。なので、やはり地下牢での撮影は難しかったですね」と苦労を明かしつつも、「スタジオのセットの中でクレーンを多様に使い横移動とともに上下移動するというのは、なかなか難しくチャレンジでした。本当に面白かったし、一番頑張ったところです」と述懐。
また、綿密に計算された空間の中、主人公・荒木村重を演じる本木が圧倒的な佇まいを見せていたことを明かす。
徹底した映像美とキャスト陣の怪演の見事な融合をうかがわせている。
(C)米澤穂信/KADOKAWA (C)2026映画「黒牢城」製作委員会また、本作の音楽を手掛けたのは、国内外で数々の映画音楽を手掛け、自身も映画監督・脚本家としての顔を持つ音楽家・半野喜弘。黒沢監督からは「お決まりの時代劇音楽ではなく、そうじゃない音楽を」という極めて挑戦的なオーダーを提示されたという半野は、当時の打ち合わせの様子を振り返る。
非常に難易度の高い課題に対して、黒沢監督の要望に応えた半野は、「単純にメロディーとハーモニーで曲という構造ではなく、時には動きやセリフや表情がメロディーに見えたりするように、音楽と交差していくような作りにしました。だから(本作では)明確にメロディーらしいメロディーがあって、それにハーモニーがついているという曲は少ないです」とこだわりを解説。
さらに、「村重と千代保の2人の会話シーンでは、2回ほどテーマ的な美しい音楽がついていて、クライマックスでもまたその音楽がかかるんです。ただ、全ての音楽はバージョンが違って、実はテンポも全部違っていて。どこでオクターブの高い音が入るというのも、その時のキャラクターの心情と会話のバランスに合わせて全部変えてあるんです」と、登場人物の感情と音楽を緻密に交差させていることを明かした。
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