ピクサーが3年かけて開発した映画をお蔵入りにした理由
2026年4月15日 18:00
Photo by Smith Collection/Gado/Getty Imagesピクサーが数年にわたって開発を進めていたオリジナル長編アニメ「ビー・フリー(原題)」が、2023年末に制作中止になっていた。お蔵入りの事実は米ウォール・ストリート・ジャーナルが先月報じていたが、米ハリウッド・リポーターが元社員への独自取材でその舞台裏を明らかにしている。50人が携わり、改稿を4度重ねたにもかかわらず中止となった背景には、親会社ディズニーの判断があったという。
「ビー・フリー(原題)」は、ピクサーの短編「心をつむいで」(2019)を手がけたクリステン・レスター監督のオリジナル企画だ。かつて親友だった10代の少女2人が主人公で、2人が大好きだった「セーラームーン」風テレビアニメの世界が実は現実だったと知り、宇宙を舞台にした冒険に巻き込まれていく。レスター監督自身の友情体験がもとになっているという。
ディズニーとの社内チェックを経た段階で大幅な修正を求められ、レスター監督らは6週間の突貫作業で全面的な作り直しに挑んだと、元社員は明かす。
「クリステンたちはディズニーに直談判しました。『今の状態がよくないのはわかっています。6週間くれれば、全部やり直します』と。通常なら1年かかる絵コンテ作業を、昼夜を問わず週7日で6週間に圧縮しました」
しかし改稿版も通らなかった。ディズニー側が繰り返し示した懸念は「男の子がこの映画に自分を重ねられない」というものだったという。元社員はこう振り返る。
「修正をいくら重ねても、ディズニーは同じことを言いました。要するに『ガールパワー映画は出せない』ということでした」
この判断が下された2023年末は、ピクサーにとって微妙な時期だった。「バズ・ライトイヤー」(2022)は同性キスの描写に右派が反発し、興行面で期待を下回っていた。制作中だった「星つなぎのエリオ」の主人公からも同性愛を示唆する要素が取り除かれている。もっとも、女性主人公の作品がすべて不振だったわけではない。「インサイド・ヘッド2」(2024)はアニメ映画の歴代世界最高興収を記録した。
制作中止が告げられたあと、ピクサーの社内では「葬式」のようなメモリアルが開かれ、社員がアートやメッセージを飾って「ビー・フリー(原題)」を見送ったという。
それから時が経ち、皮肉な展開が待っていた。少女と音楽と冒険という酷似したテーマを持つNetflixの長編アニメ「KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ」(2025)が、Netflix歴代最多視聴を記録し、今年のアカデミー賞長編アニメ映画賞を「星つなぎのエリオ」を抑えて受賞した。「ビー・フリー(原題)」に関わった元社員は、こう語る。
「『KPOPガールズ!』との類似は否定しようがありません。音楽的な要素があって、痛快な冒険で。ディズニーでこの企画を止めた人は、Netflixがまさに自分たちのやりたかったことをやっているのを見て、後悔しているんじゃないかしら」
ピクサーの最新作「私がビーバーになる時」は世界総興収3億3000万ドル(約510億円)を超える好調で、6月には「トイ・ストーリー5」の公開も控えている。
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