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ベネディクト・カンバーバッチ、喪失と狂気に揺れるシングルファーザー役で見る者の胸掻き乱す熱演

2026年3月28日 14:00

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画像1(C)THE THING WITH FEATHERS LTD / THE BRITISH FILM INSTITUTE / CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 2025 ALL RIGHTS RESERVED.

「英国映画界の至宝」と言われ、自らプロダクションを立ち上げながらインディペンデント映画からハリウッドのフランチャイズまで、精力的に活躍するベネディクト・カンバーバッチ。そんな彼が、長編フィクション・デビューを飾る気鋭、ディラン・サザーン監督と組んだのが、マックス・ポーターのベストセラー小説「悲しみは羽根をまとって」を映画化した「フェザーズ その家に巣食うもの」だ。

突然、最愛の妻を失った男が悲嘆に暮れるなか、彼の周りで奇妙なことが起こり始め、ついには人間のように大きなクロウ(カラス)が現れて不遜な態度で彼の精神を掻き乱す。

喪失の悲しみを独創的に描いた原作に惚れ込んだサザーン監督とカンバーバッチが意気投合して作り上げた作品は、胸を掻き乱すような痛みを観る者に共有させる。カンバーバッチの新たな代表作といっても過言ではない本作について、彼に訊いた。(取材・文=佐藤久理子)

画像2(C)THE THING WITH FEATHERS LTD / THE BRITISH FILM INSTITUTE / CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 2025 ALL RIGHTS RESERVED.
――喪失という普遍的なテーマを独創的に描いた作品ですが、あなたがこの物語の映画化に強く惹かれた点はどこでしたか。

ディラン(・サザーン)が映画化を試みている頃、ちょうど僕もマックス・ポーターの原作を読んだんです。マックスは喪失による深い悲しみをとても詩的、かつユニークな方法で探求していると思いました。ある年齢の男性の視点で描いたというだけでなく、悲しみは非常に複雑なもので、徐々に乗り越えていくようなものではないという考えです。愛する人を失ったときに起こる深い精神的な打撃が、日常生活では無意識の形で顕在化する。癒しかけていたと思っていたものが、突然、まるで最初のページに戻るかのように表出する、混沌としたもの。それは今まで読んだこともスクリーンで観たこともないと思いました。ディランの脚本もそれがポイントになっていました。そしてクロウは明らかに悲しみを体現し、極端な方法でそれと戯れます。

もっとも、脚本上でこれらを表現することはできるとしても、映画で描くことはとても困難だと思いました。でもディランと会って入念に話し合い、彼がそこにどう踏み込むつもりなのかを理解して、彼を信頼すると共にそれこそがわたしも探求したいことだと思ったのです。

画像3(C)THE THING WITH FEATHERS LTD / THE BRITISH FILM INSTITUTE / CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 2025 ALL RIGHTS RESERVED.
――女性と男性では悲しみの対処の仕方が異なると思いますか。あなたが演じる父親は、狼狽した状況のなかで内に籠りますし、途中彼が尋ねに行く義理の両親にしても、義母に比べて義父は何も言葉にできず、どう彼に接したら良いかわからないといった様子が映し出されます。

一般論でジェンダーについて語るのは危険だとは思いますが、わたし自身はそう思います。自分がそうなので(笑)。まあ、白人の中年イギリス人として語るなら、男性の方が悲しみを分かち合うのに慣れていない気がします。それは本当に辛いことです。映画のなかでは彼がひとりでいるプライベートな時間が描かれていて、彼の感情が爆発するのはそんなときです。怒り、苛立ち、悲しみ、恐怖が混然となって襲ってくる。状況をコントロールできない恐怖もあります。そしてそんな自分が子供の面倒をしっかり見られないことに苛立ち、それは再び悲しみとなって彼を襲うのです。

画像4(C)THE THING WITH FEATHERS LTD / THE BRITISH FILM INSTITUTE / CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 2025 ALL RIGHTS RESERVED.
――サザーン監督はこれまで音楽ビデオやドキュメンタリーを撮ってきましたが、フィクションは今回が初めてです。さきほどこの原作の映画化はとても難しいと思ったとおっしゃっていましたが、クロウの描き方などを考えるとなおさらリスクはあったように思います。彼をそこまで信頼できた理由はどこでしたか。

そうですね、彼にとってもこれが個人的にとても重要な物語だったと理解できたからだと思います。わたしにとって監督と完全に共鳴できる関係を築くことはとても大切なことです。監督の好み、嫌いなこと、ユーモアのセンス、限界点などすべてを理解したいと思います。

ディランにとって初長編フィクションということでわたしが心配だったのは、俳優がキャラクターを創造していくプロセスを監督が受け入れてくれるかということ。でもかなり早い段階からわたしたちは意見が一致していました。クロウに関してもお互いCGIを使って描くことには興味がなく、もっと有機的なものにしたいと思った。やりすぎはよくないけれど、かといって少なすぎるのも物足りない、バランスが大事なのだと思っていました。

画像5(C)THE THING WITH FEATHERS LTD / THE BRITISH FILM INSTITUTE / CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 2025 ALL RIGHTS RESERVED.
――本作ではご自身のプロダクションSunnyMarchでプロデューサーも担当されていますね。いまインディペンデントな作品を作っていくのは大変ですが、今後もサザーン監督のような若手監督をサポートしていきたいと思われますか。

もちろんです。とくにディランのように、ミュージッククリップやドキュメンタリーなど他のフィールドから来た監督がフィクションを作るのは、とても興味深いと思います。新しい分野でどんなことにチャレンジしたいのか、どんなことを表現したいのか、興味を惹かれずにはいられない。そうした彼らのヴィジョンをサポートして実現に漕ぎ着けるのは、プロデューサーとしてとてもエキサイティングだし、俳優の仕事とはまた異なる楽しみを与えられるものです。

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