キャスティングやミュージカルシーンへのこだわりも「トリツカレ男」髙橋渉監督が語る制作秘話【第4回新潟国際アニメーション映画祭】
2026年2月25日 19:00
小説家・いしいしんじの同名小説をアニメーション映画化した、ミュージカル仕立てのラブストーリー。何かに夢中になると他のことが目に入らなくなってしまい、街の人々から「トリツカレ男」と呼ばれている青年ジュゼッペは、公園で風船売りをしているペチカに一目ぼれし、彼女に夢中になる……という物語。
「特徴のある文体をそのまま映像化したいという気持ちがあり、普段とは少し違う言い回しの作品になっていると思います。また、全体的にクラシカルなデザインを前面に出し、昔のアニメのように作らせていただきました」と原作のテイストを損なわないよう配慮し、さらにこだわりの作画でおとぎばなしのような優しく美しい世界観を演出した。
ミュージカルの要素を取り入れた理由は、プロデューサーからの提案だったそうで「ミュージカル自体に不安もありましたが、原作はとてもファンタジックで解き放たれた雰囲気があります。音楽を乗せてストーリーを紡ぐことができれば、より素敵な映画になるのではないかと思いました」といい、歌や楽曲の制作に関しては、作曲家と密なやり取りを重ねたそう。ミュージカルシーンの製作でとりわけ印象に残っているシーンは、キャバレーのような場所での大乱闘シーンだそうで、「観客の気分を変えるような激しめ」な音楽をオーダーしたという。
(C)2001 いしいしんじ/新潮社 (C)2025映画「トリツカレ男」製作委員会アイドルグループ「Aぇ! group」の佐野晶哉が主人公ジュゼッペ、俳優・歌手の上白石萌歌がペチカの声を演じ、それぞれ劇中歌も歌唱も担当し、見事なパフォーマンスをみせている。はまり役とも言える主人公ジュゼッペ役の佐野を最初から想定していたのか? と問われると「最初からではありません。シナリオを書き、キャラクターデザインを進める中でジュゼッペ像が徐々に固まっていきました。理想のイメージはありましたが、そんな人がいるのだろうか……と悩むくらい難航しました。そんな中で佐野さんのお名前が挙がり、本当にジュゼッペにぴったりだったので、(オファーを)断られたらどうしようと心配していました」と明かす。
上白石については「とても真剣で静かな方でしたが、目の奥に燃えるようなエネルギーを感じました。それがペチカのイメージと重なり、この方しかいないと思いました」と結果的に自信のキャスティングとなった。
髙橋監督が気に入っているのは、ジュゼッペがペチカを元気づけようと婚約者シエロに扮装して語り合う窓辺のシーンだそう。「二人が向かい合っているだけで大きな動きはありませんが、心の動きはとてもダイナミックでドラマチックです。原作を読んだときも心を打たれた場面でしたし、演出できたことがとても嬉しかったです。このシーンに関しては、狙い通りにできたと思っています。その一方で、ビジュアル面への反響が予想以上に大きかった」と振り返る。

この日、髙橋監督は劇中でわき役として好演するネズミのシエロのぬいぐるみを携えて登場した。キャラクターデザイン担当の荒川眞嗣氏の名を挙げ「荒川さんが一番乗ってデザインされたのがシエロではないかと思います。『ガンバの冒険』が大好きな方なので、その影響もあると思います。走り方なども含め、印象的なキャラクターになりました」と述懐。
「クレヨンしんちゃん」シリーズをはじめ、多くの人気作品を手掛けているが、今作はよりアート性の高い表現が特徴だ。「こうしたスタイルのアニメーションは、シンエイ動画ではあまりやってきませんでした。どちらかというと『ドラえもん』や『クレヨンしんちゃん』のような、まろやかな作風が中心だったので、今回は尖ったスタイルに挑戦しています。ずっと憧れがあり、それを体現できたと思います」と自身の新境地の成功を喜んだ。
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