書くが、まま

劇場公開日:2019年2月9日

解説・あらすじ

オーディション番組から誕生したアイドル「ラストアイドルファミリー」の中村守里が孤独な中学生を演じた青春ドラマ。新進気鋭の監督とアーティストがコラボレーションした作品を送り出す「MOOSIC LAB 2018」で観客賞、最優秀女優賞を受賞した。中学2年生の松木ひなのは、自分の気持ちを書くことでしか表現できず、教室に彼女の居場所はなかった。そんなひなのが逃げこむように入った保健室で、先生の進藤有紀と出会う。孤独だった自分を初めて受け入れてくれた有紀に、ひなのは少しずつ心を開いていくが……。監督、脚本は、篠原哲雄監督「ばぁちゃんロード」の脚本で商業映画デビューとなった上村奈帆。盛岡のロックバンド「SWANKY DOGS」が音楽を担当。

2018年製作/77分/日本
配給:SPOTTED PRODUCTIONS
劇場公開日:2019年2月9日

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

フォトギャラリー

映画レビュー

4.5 本心という難問に

2026年6月4日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

# 本心と、失われなかったもの

映画を見終えたあと、私は少し困っていた。

何が描かれているのかはわかる。

言いたいことも見える。

タイトルにも作品の中心にも「本心」がある。

しかし、どうにも掴みきれなかった。

だから私は、いつものようにあらすじを書いた。

物語を追い直した。

十四歳の少女ひなの。

誰にも言えない思いをノートに書き続ける少女。

いじめ。

保健室。

家庭の問題。

音楽との出会い。

そして、自分の書き溜めた言葉が歌になるまで。

そうして一つひとつ拾い上げていくうちに、ようやく見えてきたものがあった。

この作品が描いているのは、本心なのだ。

人は思ったことをそのまま口にはできない。

感情はまず言葉へ翻訳される。

そしてその言葉は、相手との関係や場の空気によって加工される。

だから私たちが日常で交わしている言葉には、多かれ少なかれ体裁が含まれている。

ひなのは、その体裁に耐えられなかったのだろう。

だからノートを書く。

誰かのためではない。

自分の中に生まれた声を失わないために。

そんな作品だった。

しかし同時に、私はどこか距離を感じていた。

不倫騒動。

一晩で作られる楽曲。

ドラマとしては成立している。

でも少しだけ現実離れしているようにも見える。

嘘っぽい。

けれど不思議なことに、その嘘っぽさが嫌ではなかった。

なぜだろう。

考えているうちに、まったく別の記憶が浮かんできた。

五歳くらいの頃だった。

親戚の家へ弟を連れて遊びに行った。

たくさんのおもちゃがあった。

みんなそれぞれ遊んでいた。

ところが弟が欲しがったおもちゃを、親戚の子は何度も取り上げる。

ダメだと言う。

貸さない。

最終的に私は、そのおもちゃを手に取って親戚の子の頭を叩いた。

そして弟を連れて帰った。

激しく泣きながら。

今思えば、正しい行動だったとは言えない。

けれど、あの時の私は損得を考えていなかった。

空気も考えていなかった。

ただ、

「弟がかわいそうだ」

それだけだった。

思ったことと行動の間に距離がなかった。

そして気づいた。

私がひなのに感じていた距離は、作品との距離ではなかったのかもしれない。

ひなのは本心を守ろうとする。

自分の声を失わないように生きている。

私はそんなふうには生きられなかった。

中学時代にはもう、もっと複雑だった。

もっと打算もあった。

もっと濁っていた。

だから彼女を見ていると、どこか眩しい。

同時に、自分の中で失われたものを見ている気がする。

けれど本当に失われたのだろうか。

そう考えたとき、少し違う景色が見えた。

もし完全に失われているなら、私はこんなにも映画について考えない。

何日も引きずらない。

レビューも書かない。

わからなさを追いかけたりしない。

私がずっと考えているのは、

「自分が何者だったのか」

ではなく、

「何に心を動かされた存在なのか」

ということだった。

何を見て立ち止まったのか。

何を見て怒ったのか。

何を見て泣いたのか。

それは五歳の私にもあった。

十四歳のひなのにもあった。

そして今の私にも、まだ残っている。

形は変わった。

純粋さだけでは生きられないことも知った。

体裁も覚えた。

社会も覚えた。

それでも、何かに心を動かされる部分だけは消えていなかった。

『書くが、まま』は、本心についての映画だった。

しかし私にとっては、それ以上に、

失われたと思っていたものが、実は完全には失われていなかったことを思い出させる映画だった。

だから泣いたのだと思う。

ひなのにではない。

過去の自分にでもない。

まだ残っていたものに出会えたことに。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
R41

3.5 【自分の気持ちを紙にしか書けなかった苛められていた少女が、盛岡のロックバンドに自らの言葉を音にして貰った事で苛めに屈せずに、成長する物語。】

2024年11月17日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

幸せ

■松木ひなの(中村守里)は、自分の想いをノート書くことでしか表現できない14歳。
 そんな彼女への同級生の苛めに耐え兼ね、逃げ込むように入った保健室で、ひなのは先生の進藤有紀(長谷川葉生)と会う。
 初めて自分を受け入れてくれた有紀に、ひなのは心を開いていくが、進藤先生も不倫問題で学校内で糾弾されて行く。

◆感想

・序盤の展開は観ていてキツイ。
 だが、そこでは日本で起こっている陰惨な苛めが描かれている。
 苛めとは、当事者は傷つくが、苛めている者はそれをストレス発散にしているのだろうか。ストレス社会が産み出したモノなのだろうか。

・昔、登山を真面目にしていた時に、ネパールのシェルパ舘と雑談の際に、日本の”苛め”の話をしたら、心底驚かれた事を思い出す。
 彼らの生き方の中には”苛め”という概念がそもそもないらしい事を知って、逆に驚いた事を思い出す。

・偉そうなことを書いているが、もしかしたら私も自覚無き苛めを行っているのかもしれない。

■今作で秀逸なのは、松木ひなのが、進藤先生の窮状を見て、姉に貸してもらった青森のロックバンド”SWANKY DOGS”の所まで、姉に車を飛ばしてもらい、自身の多数のノートの言葉を曲にして貰い、罵詈雑言が貼られた保健室の鍵を閉めて、進藤先生に聞かせるシーンである。
 彼女は、自らが綴っていた想いを曲にして貰った事で、確かに成長したのである。

<苛めは、もしかしたら世界中に蔓延しているのかもしれない。
 だが、私は苛めに会って苦しんでいる人に言いたい。
 ”苛めをする輩など、無視して自分の道を進め!”と。
 苛めをする輩には、関わる必要はない。学校のヒエラルキーなど、気にする事はない。
 そんな事で悩む時間が有れば、自分のやりたいことをやれば良いと思う。
 苛めに屈してはイケナイ。今作のひなののように、自分の道を進めばよいと、オジサンは思うのである。
 ”そんなに簡単な事じゃないんだよ”と嗤う輩には、嗤わせておけば良いのである。>

コメントする (0件)
共感した! 0件)
NOBU

3.0 音楽をモロに当ててくるタイプのムーラボ作品

2024年4月4日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

ポスタービジュアルが良かったし上村奈帆監督の作品が好きなので、満を持して鑑賞。ちょっと自我が強く、作品としてのまとまりはないけど、それも許したくなる。

内包する感情の拠り所を探す話だけでなく、その半径で描いてくるのはちょっと惜しかった。尺の都合で群像劇にしてるんだろうけど、その分有り余っている感じもする。また、いじめによってこもってしまう部分、もっと繊細に描くべきだったと思う。

ただ、その分の連帯を感じさせるカット割りは上手い。しっかりと地続きに描く上村奈帆監督の手腕はあるし、ストレートながら届かせたいメッセージは投げている。ただ、音楽とのコラボにしては直球すぎていただけない。突飛な感覚もあり、全体的にネガティブな部分を占める形となった。

主演は中村守里さん。まだあどけなさも残る雰囲気と確かな眼差し、言葉少なに届けていく姿が印象的。強さを持ち始める所も魅力的に感じた。

ムーラボ作品は当たり外れが大きいが、意欲的なテーマで作ってくるので面白い。ちなみに使われてたバンド、本当に岩手のバンドらしい。なら尚更、千葉の中学生じゃなくても良かった気もする。

コメントする (0件)
共感した! 1件)
たいよーさん。

2.0 音声さん

2023年7月17日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

主人公は中2の女の子で、書くことでしか自分を表すことができず、クラスのはみ出しものだった。
保健室に逃げ込み、女性の先生と仲良くなるが、この先生の不倫がバレてしまい・・・。
セリフの音量が不足してほとんど聞き取れず、音楽だけはバカでかいのは勘弁してほしい。

コメントする (0件)
共感した! 1件)
いやよセブン