「ホテルという立場からある種客観的視点で戦争を見つめる」グランド・ブダペスト・ホテル movie mammaさんの映画レビュー(感想・評価)
ホテルという立場からある種客観的視点で戦争を見つめる
ヘンリーシュガーのような語り口で、1930年代の架空の国ズブロフカの山間にある一流ホテルブダペストホテルの持つ歴史が語りれていく。
初代コンシェルジュはムッシュグスタフ。
きめ細やかな配慮で目を光らせ、ホスピタリティの高いホテルを作り上げ、他の一流ホテルとのネットワークで上流顧客の要求に応える。
顧客には当然富豪も多く、実はブダペストホテルもオーナーは貴婦人。
実はグスタフとは添い寝の関係もあり、グスタフに全財産を遺すと最後の遺言書書き換えが届いたものだから、親族の手下に貴婦人殺しの罪を着せられ投獄されたりトラブルが巻き起こる。
その少し前に、グスタフに目をかけて貰った新人ベルボーイ、ゼロは戦争で家族を亡くし職を求めてブダペストホテルに入っており、グスタフのために尽くす。
グスタフはゼロとゼロの彼女、ホテルに生菓子を納めている菓子店の女の子アガサに助けられ、脱獄逃亡。
しかし、戦争はズブロフカにもやって来て、突然にホテルは兵宿舎に。グスタフが維持してきた美しく統制のとれたサービスを提供する一流ホテルではなくなってしまった。
グスタフがナチの手下のような軍に撃たれた後、ゼロはグスタフが貴婦人から引き継いだ遺産を引き継ぎ、グランドブダペストホテルは売らずに栄華なきあとも残した。
なぜなら、戦後数年でアガサと息子は流行病ペストで亡くなるが、新婚時代の幸せな思い出がブダペストホテルに詰まっているから。
ホテルコンシェルジュ題材のドラマや映画は数多く、内密な事情のあるお客様に余計な事を言わず漏らさず助ける職業なことは驚かない。
でも、大手ホテルがサブスク制で部屋貸ししたり、建て替えと交通アクセスの良い拠点に新設したりと変化が激しい中で、1930年代の思い出を形として遺すためにブダペストホテルはずっとある。
ゼロにとっては初めて社会的立場を持ち、愛を知り、刺激に満ちて人生の若さを捧げた場所。
自身より大切な守りたい存在なのかも知れない。
戦争しても、そういう精神までは変えられないから、無意味だよと語っているような毒を織り交ぜた口調のグスタフのスタンスと、戦争もので存在感のある役を複数見たことがあるレイフファインズの役選びが重なっているように思えて、メッセージ性を感じた。
