劇場公開日 2026年1月9日

「月1エヴァで不毛な徒労、いや、崇高なる儀式に参加してきました。」ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q こひくきさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 月1エヴァで不毛な徒労、いや、崇高なる儀式に参加してきました。

2026年1月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

Qを鑑賞するのは少なくとも4回目です。バージョン3.333は初見ですが、映像がリテイクされて4Kになったとか、IMAX対応したとか言われていますが、本質的には「わけのわからないものを、より鮮明に、高画質で網膜に焼き付けられる」という、一種の拷問に近い体験です。ストーリーラインを追おうとすると脳がショートするように設計されており、冒頭から宇宙空間での強襲揚陸作戦、聞いたこともない専門用語の羅列、そして主人公に対する徹底的なパワハラ。普通の映画作法で言えば「脚本の破綻」なのですが、庵野監督はこれを「視聴者にシンジ君と同じストレスを与えるための装置」として機能させています。つまり、映画を観ているのではなく、「ブラック企業(ヴィレ)と、カルト宗教(ネルフ)の抗争に巻き込まれた派遣社員の悲哀」を、最新の映像技術で追体験させられているようなものです。

しかし、悔しいかな、画面作りが圧倒的すぎる。「男の子ってこういうの好きでしょ?」という要素、つまり巨大戦艦の発進シークエンスや、ダブルエントリーの第13号機、槍を抜く瞬間のカタルシス。これらを、あそこまでフェティッシュに、執拗に描かれると、我々のような古いオタクは抗えないわけです。理屈じゃないんですよ。「意味はわからないが、ヴンダーが浮上する瞬間の音響と画が凄まじいから、まあいいか」と、思考停止に追い込まれる。これはもう、映像によるドラッグであり、知能指数の高い作り手による「雰囲気で押し切る力」の極致とも言えるでしょう。

そして、乱れ飛ぶ中二病的な台詞の数々。「ガフの守り人」だの「リリンの王」だの、実生活で口にしたら即座に社会的地位を失うようなワードを、石田彰や坂本真綾が良い声で囁く。これ、冷静に考えると中身は空っぽなんですが、「意味深なことを言っている空気に浸る」こと自体が、このコンテンツの消費行動そのものなんですよね。分からないことを楽しむ、いわば「考察」という名の無料の遊び場を、制作側が意図的に提供している。我々はまんまとその掌の上で転がされ続けているわけです。

結局のところ、『Q 3.333』とは何だったのか。
それは、「理屈を捨てて、網膜と鼓膜だけで庵野秀明の脳内を泳ぐアトラクション」であり、ストーリーの整合性を求める観客に対する、極めて豪華な「お断り」の看板だったのだと思います。何度観ても「意味不明」という感想にたどり着くことこそが、この映画の正しい楽しみ方であり、そこから抜け出せない我々の業の深さを再確認するための踏み絵。そう割り切るしか、心の平穏を保つ術はないのではないでしょうか。

こひくき
ぷぅさんのコメント
2026年2月7日

' 何度観ても「意味不明」 '

(笑)良かったです。
訳もわからず、でも何度も見た自分はアホなのかと当時感じていたので。
初老に足を突っ込んでますが、私はいまだに厨二病なのかも知れません。
\(^_^)/

ぷぅ
ゆきさんのコメント
2026年1月22日

めっちゃ良いレビューをありがとう!
全人類が納得のレビューでした。
(ハサウェイのレビューも最高でした!)
最近忙しくてオタってる場合じゃないのに、こひくきさんのレビューに嫉妬しちゃったよ〜今もQ流してるぅ〜w
アイコン変えました?

ゆき
CBさんのコメント
2026年1月13日

> ブラック企業とカルト宗教に巻き込まれた派遣社員の悲哀
> 意味深なことを言っている空気に浸る
> ストーリーの整合性を求める観客への極めて豪華な贈り物

エヴァ初心者で「シン・エヴァンゲリオン」を観るためだけに序破Qを一気見し途方に暮れた自分に、エヴァファンの皆さんがどんなふうに感じるのかをかいま見せてくれてありがとうございます

CB
おつろくさんのコメント
2026年1月13日

共感ありがとうございます!

コミケはC17から参戦している古参ヲタクの自分ですが、こひくきさんの華麗なレビューに圧倒されてしまいました。全エヴァヲタに読ませたいくらい的を射ていると思います。

バージョン3.333はスクリーン初見でしたが、3.0+1.11の円盤で予習していたので分かりやすかったです。でも内容が「Q」の前日譚なので、本来なら「破」のエンドに予告映像として付けるべきでしたよね。

庵野監督の事を悪く言いたくはないのですが、シンジだって「逃げちゃダメだ」って言っているのに、監督自身がシン・ゴジラに逃げたのは不手際でしたね。シン・エヴァに至るまでの9年間をただ待ち続けていた根気強いファンが本当の勝者だと思います。

おつろく