マルコムX

ALLTIME BEST

劇場公開日:1993年3月21日

解説・あらすじ

黒人解放運動の指導者マルコムXの生涯を描くスパイク・リー監督渾身の力作。ボストンのスラム街に暮らす青年マルコムは犯罪に手を染め、やがて逮捕される。刑務所でイスラム教に改宗した彼はマルコムXと改名。出所後、ブラック・ムスリム運動の指導者イライジャ・モハメドのもとで、白人を敵視する扇動的な運動を展開することに。その後、人種差別に対する抵抗運動が各地で激化。メッカを巡礼したマルコムは異人種との共存という思想に目覚めるが……。

1992年製作/201分/アメリカ
原題または英題:Malcolm X
劇場公開日:1993年3月21日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第50回 ゴールデングローブ賞(1993年)

ノミネート

最優秀主演男優賞(ドラマ) デンゼル・ワシントン
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映画レビュー

3.5 【”黒人解放家でありながら、黒人に暗殺された悲劇の男。”今作は39歳で暗殺された黒人解放運動の指導者・マルコムXの生涯を描いた伝記ドラマである。】

2026年6月26日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

怖い

知的

■ボストンのスラム街で生まれた黒人のマルコム・リトル(デンゼル・ワシントン)は、ギャングに成り21歳の時に強盗で逮捕される。
 服役中にブラック・モスリムの教えに開眼したマルコムはマルコムXと改名し、1952年に出所後、”ネーション・オブ・イスラム”のスポークスマンとして注目を浴び始める。だが、”ネーション・オブ・イスラム”のリーダー”イライジャ・ムハンマド”が若い女性2人に子供を産ませ、思想的にも黒人絶対主義を唱える阿呆である事にようやく気付いた彼は、”イライジャ・ムハンマド”と決別するのである。

◆感想

・今作を観ていると、何故にマルコムXは、ほぼ同じ時期に暗殺されたキング牧師が尊敬されているのに対し、彼への扱いが低いかが良く分かるのである。

・彼は、人を見る眼が悉くないのである。ギャングになった切っ掛けの男に心酔し、その後逮捕。漸く出所すれば、その男はよれよれのアパート暮らしをしている始末である。

・”ネーション・オブ・イスラム”のリーダー”イライジャ・ムハンマド”に心酔する過程も全く同じである。
 そして、アメリカ国民が愛したケネディ大統領が暗殺された時の、あの不適切な発言である。
 あの阿呆な”イライジャ・ムハンマド”から”組織に悪影響を与えるので、90日間黙って居ろ!”と言われる始末である。

・だが、彼はその間にメッカに行き、真実の人種思想を持つ男に成り、黒人絶対主義を唱える”ネーション・オブ・イスラム”と決別するも、結局は”ネーション・オブ・イスラム”の刺客に講演中に妻子の前で暗殺されるのである。

<今作は39歳で暗殺された黒人解放運動の指導者・マルコムXの生涯を描いた伝記ドラマなのである。デンゼル・ワシントンの演技は名演である事は、敢えて記す次第である。>

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NOBU

4.5 【91.5】マルコムX 映画レビュー

2026年3月8日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

スパイク・リー監督による1992年の大作「マルコムX」は、アメリカ映画史において、一人の人間の精神的覚醒をかつてないスケールで描き出した、至高の人間讃歌である。本作は単なる伝記映画の枠組みを遥かに超え、人種、宗教、そして自己の変革という人類普遍のテーマを、圧倒的な熱量と精緻な映像美で描き出している。公開から30年以上を経た今日においても、本作が放つ社会的メッセージと芸術的輝きは、いささかも色褪せることはない。
作品の完成度と脚本の考察において、本作の白眉と言えるのは、マルコム・リトルという一人の男が辿った劇的な変遷を、三幕構成の見事なリズムで構築している点にある。脚本はアレックス・ヘイリーとの共著による自伝を基に、スパイク・リーとアーノルド・パールが執筆した。第一幕のボストンでの派手な無頼漢時代、第二幕の服役とネイション・オブ・イスラムへの帰依、そして第三幕の組織との決別とメッカへの巡礼、そして暗殺。これら全く異なる色彩を持つ三つの時期を、脚本は一貫した「アイデンティティの探求」という軸で力強く繋ぎ合わせている。特に、排他的な怒りから出発したマルコムが、真のイスラム教の精神に触れ、全人類的な博愛へと昇華していく終盤の展開は、重厚なドラマツルギーに満ちており、観る者に深い感動と内省を促す。
演出・編集・映像・美術の側面では、スパイク・リーの作家性が遺憾なく発揮されている。撮影監督のアーネスト・ディッカーソンは、時代ごとにカラーパレットを使い分け、初期の暖かいトーンから、中盤の冷徹な色彩、そして終盤の鮮明でクリアな映像へと移行させることで、マルコムの精神的覚醒を視覚的に表現した。また、編集における緩急の付け方も秀逸であり、3時間を超える長尺でありながら、一瞬たりとも観客の集中を途切れさせない。衣装デザインのルース・E・カーターによる、時代の空気感を捉えた精巧なスーツやズートスーツも、キャラクターの社会的地位と内面の変化を補強する重要な役割を果たしている。
キャスティングと演技については、本作を語る上で最も不可欠な要素である。
主演のデンゼル・ワシントン(マルコムX役)は、本作でオスカー主演男優賞にノミネートされたが、その演技は「演じる」という次元を超え、マルコムという魂をその身に憑依させたかのようであった。前半の軽薄な若者から、鋭利な刃物のようなカリスマ的指導者、そして晩年の穏やかさと危うさを併せ持つ賢人まで、声のトーン、身のこなし、演説の際の間合いに至るまで完璧に制御されている。特に、聴衆を煽動する演説シーンでの圧倒的なエネルギーと、静寂の中で見せる孤独な眼差しは、映画史に残る名演として永遠に記憶されるべきものである。
助演のアンジェラ・バセット(ベティ・シャバズ役)は、マルコムの妻として、激動の人生を歩む夫を支え続ける芯の強い女性を演じきった。彼女の存在は、政治的・社会的な側面が強い本作において、家庭という安らぎと、愛する者を失う恐怖という人間的な感情の拠り所となっている。夫が過激な思想へと傾倒し、命を狙われる日々の中で、彼女が見せる慈愛に満ちた表情と、暗殺現場での悲痛な叫びは、観客の心に深く突き刺さる。アンジェラ・バセットの気品ある演技は、この叙事詩に血の通った温もりを与えている。
同じく助演のアル・フリーマン・Jr(イライジャ・ムハンマド役)は、マルコムの精神的師父でありながら、後に決別の対象となるネイション・オブ・イスラムの指導者を怪演した。その静かでありながら威圧的な佇まいは、若きマルコムが盲信した絶対的な権威そのものであり、後半に見せる老いと権力への固執は、マルコムの覚醒を際立たせる見事な対比となっている。
デルロイ・リンドー(ウェスト・インディアン・アーチー役)は、マルコムが暗黒街にいた頃の兄貴分として強烈な印象を残す。裏社会の非情さと、没落していく男の悲哀を体現しており、彼の存在がマルコムにとっての「過去の自分」の象徴として機能している。
さらに、クレジットの最後にはネルソン・マンデラが本人役(教室の教師役)として登場する。このキャスティングは、マルコムXの遺志が海を越え、アフリカ大陸の希望とも共鳴していることを示す、映画史に残る感動的な大団円を演出している。
音楽においては、テレンス・ブランチャードによる荘厳なスコアが映画の重厚さを支えている。また、劇中で流れるサム・クックの名曲「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム(A Change Is Gonna Come)」は、公民権運動のうねりとマルコムの心境の変化を完璧にシンクロさせ、映画的な魔法を顕現させている。
本作は、第65回アカデミー賞において、デンゼル・ワシントンの主演男優賞とルース・E・カーターの衣装デザイン賞にノミネートされた。受賞こそ逃したものの、ベルリン国際映画祭ではデンゼル・ワシントンが銀熊賞を受賞し、世界的にその芸術性が高く評価された。
「マルコムX」は、一人の人間の魂の変遷を記録した偉大なドキュメントであり、同時にスパイク・リーという鬼才が、自らのルーツと信念を映画という媒体に叩きつけた最高傑作である。この作品を観ることは、人間がいかにして自らの過ちを認め、高みへと這い上がることができるかという希望を体験することに他ならない。映画史という広大な地図の中で、本作は黒人映画の最高峰としてだけでなく、全映画ファンが一度は通過すべき輝かしい座標として君臨し続けている。
作品[Malcolm X]
主演
評価対象: デンゼル・ワシントン
適用評価点: 30
(評価点 S10 \bm{\times} 3 = 30)
助演
評価対象: アンジェラ・バセット、アル・フリーマン・Jr、デルロイ・リンドー
適用評価点: 8
(評価点平均 B8 \bm{\times} 1 = 8)
※アンサンブルとしてのバランスを再評価。
脚本・ストーリー
評価対象: スパイク・リー、アーノルド・パール
適用評価点: 63
(評価点 A9 \bm{\times} 7 = 63)
※終盤の冗長性と伝記的側面を考慮し、SからAへ修正。
撮影・映像
評価対象: アーネスト・ディッカーソン
適用評価点: 9
(評価点 A9 \bm{\times} 1 = 9)
美術・衣装
評価対象: ルース・E・カーター、ウィン・トーマス
適用評価点: 10
(評価点 S10 \bm{\times} 1 = 10)
音楽
評価対象: テレンス・ブランチャード
適用評価点: 8
(評価点 B8 \bm{\times} 1 = 8)
編集(加点減点)
評価対象: バリー・アレクサンダー・ブラウン
適用評価点: 0
(調整値 0)
※3時間超の長尺における中だるみを考慮し、加点を撤回。
監督(最終評価)
評価対象: スパイク・リー
総合スコア:[91.5]

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honey

3.0 最後は内ゲバだったのか

2025年11月22日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

マルコムXという人物には以前から興味があったが、ちゃんと映画で見たのは初めてだった。
元々興味を持ったのは、平和主義のキングと暴力主義のマルコムXという構図。
結局はどちらも暗殺されて幕を閉じるのだが、キングは教科書にも載る偉人的な扱いなのに対して、マルコムXは露出度も低くどんなポリシーだったのかは知らなかった。
3時間半近い長編だが、まあダレずには観られた。
また、イスラム教に傾倒し、解り合い共生しようというキングに対し、マルコムは分かり合えるはずがないので分離しよう、可能ならアフリカへ戻ろうという主義だったことは新たな発見だった。
ただ、宗教を背景とした政治活動は矛盾が生じ始め、結局は暗殺されたのは白人にではなく黒人同士の内ゲバであったという事実は衝撃だった。
1人の人物を追ったドキュメンタリー的な側面ではよく理解出来たが、価値観が違い過ぎて、感情移入は出来なかった。

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だるちゃ

4.5 ブラック・ムーブメントの到達点

2025年10月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

知的

斬新

『JFK』などと並び、3時間以上という長さを全く感じさせない傑作。主演のデンゼル・ワシントンはマルコムXが乗り移ったかのような熱演だった。マルコムXについてはこれ以前にジャーナリストの本多勝一の本でキング牧師と並べて触れられていたので知ったが、映画公開時には自伝をはじめとしたマルコムXの関連本が大量に出版されていたのを覚えている。

なおアルバート・ホールが演じている、マルコムをネーション・オブ・イスラムに誘い最終的には裏切るベインズは架空の人物で、実際にマルコムをネーション・オブ・イスラムに誘ったのは彼の姉だったとのこと。マルコムには多くの兄弟がいたが、本作ではほとんど登場していない。

また一ヶ所だけ気になったのは、「あなた方のために私にできることは何かないでしょうか?」と聞いた白人の若い女の子に、マルコムが「何もない」と言い放つシーン。自伝では過去の過ちとして語られるエピソードなので、後の場面でマルコムの後悔が描かれると思ったんだが、そういうシーンはなかった。我々日本人も含めて非黒人はあの白人少女に感情移入するので、それを拒絶したままで終わるというのは大きなマイナス。終盤には白人との融和も描かれていたが印象は薄かった。ただ、そのような欠点はあるにしても、本作が質の高い優れた映画だったことは間違いない。

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バラージ