よき谷の物語のレビュー・感想・評価
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ドキュメンタリー?
ホセルイス
シルビアのいる街で、の何が好きって、古都ストラスブールの白壁に乱暴にボムられたタグだった。
今回もちゃんとタグが出て来て、それが描かれているのは皆が口を揃えて讃える街の功労者のおじいちゃんが、昔住んでた家の廃墟で、容赦なくボムらてるだけど、まるで都市も自然の一部だ的な収まり方をしていて。
シラートから飛び出してきたみたいな自彫タトゥーのおばちゃんとか、巨乳の姉ちゃんとか、コロッサルユースの黒人清掃員みたいなおじちゃんとか、ベランダに掲げられたパレスチナ国旗が2家庭分確認出来たり、
そもそも街のまわりは絶え間なく、忙しなく、高速鉄道と高速道路が張り巡らされていて、その中に畑と水路が点在してるストリート感。
そう、ホセルイスに毎回感じるのはストリート感。
ヴァンダとかとは違って、もっとスケボーとかヒップホップに近いストリート感。あいかわらずイケてる。
ジャンルはドキュメンタリー映画に近いが、スペイン映画は数が少ないので是非。
今年52本目(合計1,794本目/今月(2026年7月度)9本目)。
タイトル通り、「谷の物語」(実際には「谷」ではない。作品参照)の住民たちの生き方をずっと描いていく、ドキュメンタリー映画という観点が強く存在する作品です。アクション映画でもありませんし、「映画か?」という微妙ですが、まぁジャンルとして見た場合、「ドキュメンタリー映画」ということになろうと思います。したがって、映画に何らかの娯楽性を求めるなら余りおススメできません。
映画が述べたいシーン(バルセロナの中にある、きわめて「取り残された地区」の在り方のこと)もはっきりしており、また、映画もこのようにドキュメンタリー映画ですので、いきなりヘンテコな方向に飛ぶことがなく(飛びようがない)、外国映画、特にヨーロッパ映画としては、フランス映画、ついでドイツ映画が代表的ですが(イギリス映画は群を抜いて多いので別格扱い)、スペイン映画は数は少ないものの存在し、その中の一つにあたります。
どうしてもドキュメンタリー映画という性質上、積極的に感想を書きましょうというのはなかなか難しく、日本との比較でいっても、日本ではそのような地区(大都市で一つの地域だけが取り残されている)というのは存在しないので、比較論も難しいかな、といったところです。ただ、数少ないスペイン映画好きなら是非、といったところです。
採点に関しては以下まで考慮しています。
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(減点0.2/点過去・線過去・直前過去(点過去完了)・過去完了(線過去完了)の区別が字幕でつきにくい部分がある)
ただ、字幕は文字数が限られるし、このように色々な過去形があるのはスペイン語の特徴でもありますが(他の言語でも数の多少はあります)、指定された文字数制限から翻訳をしきるのは難しいところもまぁあろうということで仕方がないかな、といったところです。
なお、ある程度スペイン語の知識があるとわかりますが、 ser と ir は、点過去においては完全同一活用をしますので注意です(前後関係で見分けるしかない。映画内でもこの話はしばしば出てくる)。
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子供の情景、愛の夢
駅を降りた先の光景
バルセロナ郊外の小村。鉄道沿線の安手アパート群、つましい花畑と菜園、埋め立て寸前の水路で涼をとる人々、急増する移民へのかすかな不満…と今のヨーロッパでありふれすぎるくらいありふれた光景をていねいに3年追うと、これほどみごとな画面になる。
日本でも電車に乗って大都市を通るとどこまでもつづくアパート・マンション群が車窓を流れてゆく。あの無数の窓の奥でいったいどんな人がどんな人生を送っているのか、と思うことはよくあるけど、普通はすぐ忘れてしまう。この映画は、そこを忘れるままにせず駅を降りてしっかり一人一人に向きあった、そういう映画なのですね。社会学者が「底辺層」「貧困層」と雑にまとめてしまいそうな人々にも置きかえのきかない歴史と人生がしっかりあって、それが映像として定着されている。
ドキュメンタリー映画でありながらカメラがたいへん見事で画面が美しいのは、近年の世界的な傾向。でもこれはそういう個々人の歴史の重みと社会の変化が深い余韻として重なり合って、見事な成果をあげている。この監督はビクトル・エリセが賞賛しているそうだけど、さもありなんですね。
ひとことにまとめると資本主義の社会で分断が拡大してゆく様子に目を向けているということなんだけど、そういう状況を、単純に断罪しようとしているのでは決してない。朝日新聞で北小路隆志なるバカなレビュアーが資本主義と社会問題への示唆を含むとかの相変わらず的外れな感想を書いてるけど、この映画はそういう凡庸な感想よりも数段は上を行っている(映画批評家を名乗っているくせに画面を読み取れず、そういう安いカラオケみたいな教条主義に酔ってるからこのレビュアーはダメなのだ)。
一方で、普通の人々のありふれた暮らしを撮って「美しい」とはどういうことか、とも考えた。とくに何度か使われる移動ショット(カメラをレールに乗せて水平に滑らかに移動する)は、なんとなしに居心地の悪さを感じた。つまり、被写体の人々は単に立っているだけ・暮らしているだけなんだ。そこに水平移動ショットをもちこむと、映画的に意味ありげなショットが強制出力されてしまう。美しくない日々の暮らしが美しく劇的に見えてしまう、見せてしまう。ゴダールが半世紀前につぶやいた「移動ショットはモラルの問題だ」という名高いセリフが、今も生きている。
エンディングはすばらしくて、ほとんど古いフランス映画のようなさみしさと喜劇性がないまぜになった見事なもの。しかしこれもドキュメンタリー映画にしては巧みにクロスカッティングを多用して、編集によってだいぶん現実の時間の流れとはことなった様子が定着されている。
そんな感じで、すぐれた映画だし多くの人は好感をもつと思うけど、テクニカルにはいくらかの議論の余地を残す、というところですかね。
多様な人々の暮らし
ドラマではなく「時間」を味わう。下町の日常を静かに見つめる極上の環境映像
スペイン・バルセロナ郊外のバルボナ地区を舞台に、鉄道建設という変化に直面する街と、そこに暮らす多様な人々の日常を淡々と捉えたドキュメンタリー。
本作には、いわゆる映画的な「劇的なドラマ」や「感情の起伏」を揺さぶるようなストーリー展開は存在しません。描かれるのは、住民たちの何気ないお喋り、穏やかな風景、そして生活の音。映画にしっかりとしたプロットやメッセージ性を求める鑑賞スタイルの場合、少し退屈に感じてしまうかもしれません。
しかし、一歩引いて「この土地に流れる時間を共有する」という視点に切り替えると、途端に愛おしい作品へと姿を変えます。美しい光が差し込む街並みや、劇伴を排して生活音だけで紡がれる音響は、まるで自分もその街の片隅で風を浴びているかのような心地よさ。
映画という枠組みを超え、異国の日常の空気感にただ身を委ね、贅沢な「時間」を消費したい方に向けた、好みの分かれる異色の一本です。
人が街を作る
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