「泣く準備はできていた。でも最後まで川口春奈だった。」ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記 こひくきさんの映画レビュー(感想・評価)
泣く準備はできていた。でも最後まで川口春奈だった。
泣く気満々で映画館に入りました。何しろ、20代前半でステージIVの大腸がんを宣告された女性が、結婚し、治療と妊娠の間で揺れ、娘を産み、その成長を見届けることなく亡くなる実話であります。これで泣かなかったら人間として何かが欠けているのではないか、とこちらも万全の態勢で臨むわけです。
ところが、泣けない。
いや、正確に言えば、泣けそうになる。そのたびに映画が「はい、これは実話ですよ」と肩を叩いてくるので、すっと涙が引っ込むのであります。
川口春奈は悪くありません。むしろ上手い。病気への恐怖、家族への苛立ち、夫への愛情、子どもを残したいという執念まで、きちんと演じている。それなのに最後まで、遠藤和さんではなく「川口春奈」に見えてしまう。これが実に困る。
役者の知名度が高いから、というだけでもないでしょう。病状が進んでも画面の中には川口春奈の輪郭が強く残り続け、こちらは「和さんが苦しんでいる」より先に「川口春奈が苦しむ芝居をしている」と認識してしまう。演技が下手ならまだ話は簡単なのですが、上手いのに役が俳優を超えてこないのであります。
さらに本作、ところどころでテレビ番組出演時のインタビュー映像風のカットや、家族が撮影したホームビデオ風の映像を差し込んできます。しかも、どちらもかなり「それっぽく」作られている。テレビ番組の映像は、実際に当時放送された素材をそのまま持ってきたような質感。ホームビデオの方も、家族がその瞬間を偶然記録していたかのような手触りです。
本来なら「これは本当にあった人生なのだ」と実在感を補強するための演出なのでしょう。ところが、こちらとしてはもう十分わかっているんですよ。実話なのは知っている。和さんが実在した人なのも知っている。家族が実際にこの出来事を経験したのも知っている。
そこへ何度もテレビ番組風、ホームビデオ風の映像を差し込まれると、だんだん「ほら、実話ですよ」「これ、本当にあったことなんですよ」と念押しされている気分になってくる。感情移入しかける。ホームビデオ風の映像が入る。あ、これは再現映画だった、と客席に戻される。また入り込む。今度はテレビ番組風インタビュー。また戻される。
映画館で涙腺を緩めに来たのに、なぜか「この映像、当時のテレビ放送っぽくよく作ってるな」「このホームビデオ感、狙ってるな」などと、演出を観察している俺がいる。困ったものです。
しかも、普通のドラマ部分でも川口春奈が和さんではなく川口春奈に見えているものだから、このホームビデオ風やテレビ番組風の演出が実在感を補強するどころか、むしろ「川口春奈が実在人物を演じている」ことを強く意識させてしまう。
つまり、実話へ近づくための演出が、役と俳優の距離を逆に見せてしまっているわけです。とはいえ、夫婦や家族の葛藤を描いていないわけではありません。
治療を優先してほしい夫や父と、子どもを産みたい和。病状が悪化して家族へ苛立ちをぶつける和。セカンドオピニオンを探し続ける将一。ここはちゃんと描かれているし、小林聡美演じる母親も素晴らしい。娘の死を前にしてなお取り乱さず立っている姿には、単なる「泣かせる母親」とは違う重さがあります。
そして森田望智。この人が出てくると、急に映画の体温が変わります。緩和ケアへ移るがん患者という役ですが、笑顔も絶望も妙に生々しい。短い登場なのに、こちらは「森田望智が演じている」と考える前に、その人物を見てしまう。皮肉なことに、本作で最も強く胸を突かれたのが主人公ではなく彼女のくだりでした。
素材は強烈です。若くしてがん。結婚。妊娠。出産。死。残された娘。日記。そして5年後。これ以上何を足せというのでしょう。なのに映画は、強い実話をそのまま信じ切れず、テレビ番組風インタビュー、ホームビデオ風映像、回想、極端なアップ、象徴的な演出を次々と重ねる。
その結果、「泣ける人生」は確かにそこにあるのに、「泣ける映画」から少しずつ遠ざかってしまったように思います。和さんの人生には心を動かされる。川口春奈の演技にも感心する。それでも最後まで、私は和さんを見ていたというより、川口春奈主演の映画を見ていました。
泣く準備だけは、完璧だったんですけどね。
イイねありがとうございました。
私は 悪人なので 娯楽・参考として観ました。レビューは私の偽善で美辞麗句で作ってますが
実は 全然 泣けませんでした。泣く気もなかった。
泣かせよう 泣かせよう という製作陣のご尽力が 私には効かず。
勿論 実話のご本人 ご家族の尊厳 は 傷つけたくないし 心情は汲み取りたい。
でも 私は 厚生労働省のがん治療支援制度キャンペーンの失態 が契機だから 観ました。
厚生労働省のミス が無ければ こういう作品は 内容がほぼ同じなので 見ることは 絶対になかったです
おっしゃるように 本作にも?有料パンフにもご本人ご家族の写真載ってますが
川口春奈さんではないので 川口春奈さんのお芝居として観ました。
本作 鑑賞は義務ではなく 自分のお金なので。 ごめんなさい 皆さん 感動一本で
客観的に観てるレビュー 貴殿様しか見当たらないので つい 愚痴が。すみません

