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MGMアイコンのレオ様までメェ〜と鳴く本作、とにかくもふもふレベルが高い。VFXを担当したスタジオFramestoreの技術による羊のビジュアルはとにかくリアルで、そんな彼らが当然のように英語をしゃべり出した時はあまりのシュールさにしばらく話の内容が頭に入ってこなかった。
人語を解し、羊どうしの会話では英語を駆使する(というか、羊語の会話を映像表現の都合上英語に置き換えているという体裁なのか?)というアニメ的な設定と、あくまでリアルな見た目とのギャップがとてもいい。
どの羊も個性があって魅力的だが、とりわけ冬生まれの子羊の声に悶絶した(字幕で見ました)。何か動作する時に小さく「ア……ア」とか発してたのは反則級。
最後にケイレブの牧場からわらわらとやってきた、ひつじのショーンでお馴染みサフォーク種の羊もかわいかった。ひつじのショーンもイギリス生まれ。ちなみにサフォーク種は最高級の羊肉が得られる種で、ケイレブの牧場で彼らが飼われていたのはそういう意味では妥当。
ヒュー・ジャックマンはインタビューで本作について「『ナイブズ・アウト』と『ベイブ』を合わせたようなクレイジーな話」と言ったそうだが、まさにそんな感じだ。
羊たちは人間と言葉でのコミュニケーションが取れないため、メインキャラでありながら羊自身が関係者の前でコナン君よろしく謎解きを披露することはできない。
おまけに同じ牧場の羊といってもバラバラな個性の曲者揃い。一匹狼の羊(!?)、喧嘩っ早い双子羊、おじいちゃん羊、質問厨羊、冬生まれを理由に爪弾きされる羊。
だが彼らは、自分たちを可愛がってくれた羊飼いジョージへの愛情という点で気持ちを同じくし、ジョージのために牧場を出て、人間の捜査を助けようとする。
正直、ミステリの種明かしにはツッコミどころもあった。金髪のカラーリングの黄色い薬剤が手に付いたというが、そんなに薬剤が髪に残るのも不自然だし……。
途中でどの羊だったか、干されていた緑のシミの付いた布を頭に引っ掛けて爆走していたが、後でネット情報を見てあれがエリオットの泊まった宿屋の枕カバーだったと知った。緑ということは犯行後に付いたということで、振り返れば大きなヒントだった(いやカラー剤そんな付かないでしょ、スーパーミリオンヘアーならともかく……とは思うものの)。
遺言状にあった「2人の殺人者(two murderers)」は結局肉屋とケイレブのことだったようで、つまりジョージ的には「羊殺し」の意味で書いたと思われるが、ケイレブが黄色いセーターを着ていたこともあってまんまと惑わされた。
ポンコツ警官のティムが、羊たちの言葉なきヒントを的確に把握して真実に辿り着くのは若干ご都合感があったが、彼が最初からシゴデキ警官だと羊の存在意義が薄くなるのでまあよしとする。
ざっくりした部分もありながらそれなりに凝った仕掛けのミステリと並行して、羊たちの冒険と成長もしっかり描かれていた。
死という概念を知らず、つらい記憶に耐えられないので3つ数えて忘れてしまうという羊たちの生き方は、一歩引いて見ると人間の弱さにも通じる特性のようにも思えてくる。自分の牧草地から出ることを恐れ、現実逃避をしていては、懸念は何も解決しない。
(3つ数えるとガチで忘れる、というのは羨ましいなと一瞬思ったりもしたが)
ジョージの謎の死というショッキングな出来事によってそういった彼らの価値観は変わってゆくのだが、羊たちがそれぞれに個性を活かした役割を果たすところがいい。リリーは事件の謎に肉薄し、セバスチャンは外の世界に怯えるリリーを勇気づける。モップルは忘れないことの大切さを説き、ロニーとレジーはクライマックスでその突進力を活かす。冬生まれはティムに事件の重要なヒントを伝える。
ジョージの死の真実を明らかにすることで牧場に平和が戻り、冬生まれも集団に受け入れられ、ケイレブの元にいた羊たちも救われる王道の大団円が心地いい。
なんだかんだありつつ見終わる頃にはもふもふほっこりした気分になれる、安心感のある映画。