「時代劇ミステリー、侮る勿れ。菅田将暉は正義、本木雅弘はやはり伊右衛門の人。」黒牢城 ななやおさんの映画レビュー(感想・評価)
時代劇ミステリー、侮る勿れ。菅田将暉は正義、本木雅弘はやはり伊右衛門の人。
黒沢清監督が初めて時代劇に挑み、米澤穂信の同名ミステリー小説を映画化した作品。
織田信長に反旗を翻し、有岡城に立てこもった荒木村重。城の外には織田軍、城の中には疑心暗鬼に陥る家臣たち。さらに密室と化した城内で殺人事件が起こり、村重は牢に囚われた黒田官兵衛の知恵を借りながら、事件の真相に迫っていく。
正直に言うと、私は時代劇があまり得意ではない。
まず、言葉に慣れるまで時間がかかる。
「それがし」は私。
登場人物も多く、役職や関係性を理解するまで、序盤はほとんどウォーミングアップのような時間だった。
洋画やインド映画を観る時にも、少し似た感覚がある。
その世界の言葉や空気に体がなじむまで、最初の30分ほど時間が必要になる。
場合によっては、軽い睡眠込みで😅
けれど本作は、そこを越えると少しずつ面白くなってくる。
城の外には敵、城の中には裏切り者がいるかもしれない。
戦国時代の物語でありながら、閉ざされた空間で人々の疑いと恐怖が広がっていく構造は、ミステリーとして見応えがあった。
本木雅弘演じる荒木村重は、城主としての重さと孤独を背負っていて、静かに存在感がある。
私の中ではどうしても「伊右衛門の人」なのだけれど、これが意外と作品の中でもしっくりきてしまった。
村重が家臣から重要な話を聞き出す場面で、お茶を丁寧に立て、相手に振る舞うシーンがいくつかある。
その所作がとてもきれいで、静かで、緊張した城内の空気の中に、ふっと違う時間が流れる。
ただ、こちらの脳内ではそのたびに伊右衛門の音楽が流れていた。
どうしても流れていた。
これはもう仕方がない。
そして極めつけはラストだった。
生き延びた荒木村重が、その後、茶人として生涯を送ったと知った瞬間、思わず「あーーー」と腑に落ちた。
なるほど。
だから本木雅弘さんなのか。
だから伊右衛門の人なのか。
もちろん勝手な解釈だけれど、私の中ではここでひとつ謎解きが完了した。
そして、黒田官兵衛役の菅田将暉。
牢に閉じ込められているにもかかわらず、場の中心にいる。
自由に動けない人物なのに、言葉と眼差しだけで物語を動かしていく感じがよかった。
菅田将暉が出ていなかったら、おそらく私はこの作品を観ていなかったと思う。
けれど、観終わってみれば、彼を入口にしてこの城の中まで入っていけた気がする。
序盤は少し苦戦した。
でも、人物の関係性が見え、城内の緊張感が高まってくるにつれて、物語に引き込まれていった。
時代劇が苦手な私でも、後半はちゃんと面白く観られた。
最初の30分を越えた先に、城の中の人間ドラマとミステリーの面白さが待っている作品だった。
