未来 : インタビュー
黒島結菜、声を上げることができない子どもたちに寄り添う大人としての思い

(C)motoishiduka
「告白」をはじめ、数々のベストセラーを世に送り出してきた湊かなえがデビュー10周年の年に発表したミステリー小説を瀬々敬久監督が映画化した「未来」。過酷な現実を生きる少女に届く“未来のわたし”からの手紙を軸に展開する本作にて、自身も複雑な過去を抱えながら、子どもたちに寄り添おうとする教師・真唯子を演じるのは黒島結菜だ。
2022年NHKの朝ドラ「ちむどんどん」主演を経て、来年には30歳を迎えるが、十数年ぶりとなる瀬々監督の作品で、若い世代に手を差し伸べるこの役にどのような思いで挑んだのか――?(取材・文/黒豆直樹)

(C)2026 映画「未来」製作委員会 (C)湊かなえ/双葉社
――“子どもの貧困”をはじめ、心がえぐられるような過酷な描写も多い本作ですが、出演を決めた理由を教えてください。
まず、瀬々さんが、湊さんの原作で映画を撮ると聞いた時点で「絶対に参加したい!」と思いました。それから原作を読ませていただいて正直、つらい描写も多くて「これを映像にするとどうなるんだろう?」とちょっと緊張するような……、湊さんが伝えたいこと、知ってもらいたいことを大事に演じて、きちんと映画にできるように頑張らなくちゃいけないと思いました。
――瀬々監督とは、2015年公開の「ストレイヤーズ・クロニクル」でご一緒されていますね?
「ストレイヤーズ・クロニクル」は私にとって、「お芝居で気持ちが通じ合うって、こういうことなんだ!」というのを初めて知った作品でした。芝居はひとりでやるものじゃなくて、みんなでつくり上げていくものなんだということを教えられた現場でもあり、10年以上を経て、また瀬々さんとご一緒できるのは嬉しかったです。前回はいっぱいいっぱいでしたけど、今回は少し余裕も出てきて多少、瀬々さんのことを知ることもできて「面白い人だなぁ」って思いました(笑)。さらに10年後くらいにもう一度ご一緒できたら、今回ともまた違っていて、楽しいかもしれませんね。

――先ほど「つらい描写が多い」とおっしゃっていましたが、この物語の魅力や映画にする意義をどういう部分に感じましたか?
子どもの貧困であったり、なかなか報道されないような現実、本当に自分から調べないと出てこなかったりすることが描かれていて、映画を通じてこういう状況、現実があるというのを知ってもらえるきっかけになるんじゃないか? そこにこの作品をつくる意味があると思いました。
――真唯子という役柄についてはどのように捉えてらっしゃいますか?
自分自身のつらい経験があるからこそ、子どもたちに手を差し伸べられる――単なる優しさともまた違って、すごく共感力が高い人なのかなと感じました。その一方で彼女も不器用で決して完璧ではないので、その人間らしさをうまく表現できたらと思いました。
――黒島さん自身、10代、20代前半の頃は、本作の章子(山﨑七海)のような生徒側の役を演じることが多かったかと思いますが、今回は彼女たちを救おうとする大人の側の役柄でしたが、演じられていかがでしたか?
すごく大きな経験になりました。これまでは、子どもの側の目線で大人たちと接するような役柄が多かったし、私生活でもそういう機会が多かったんですけど、20代後半になって「あぁ、これが私が思っていた“大人”なのかな……」という思いもあったし、私自身も出産を経験して、子どもがいる中でこの作品と向き合って、やっぱり視点が変わったなと感じます。

(C)2026 映画「未来」製作委員会 (C)湊かなえ/双葉社
――実際に現場で真唯子を演じる上で、苦労された部分や大変だったシーンを教えてください。
北川(景子)さん演じる文乃と小学生の章子のシーンは、2人の心情みたいなものが伝わってきて、真唯子がどういう気持ちで2人に向き合ったらいいのか? というのがわかった瞬間でもあり、本当に現場で感じることが多かったです。だからこそ、大切なものを見逃さないようにと集中し続けなくてはいけなくて、それはすごく大変でした。
真唯子自身の大変なシーンの部分――懸命にバイトをするけど、母親に金を奪われて、坂東(龍汰)くんが演じる原田との関係や教師としての仕事でもいろいろあって……という流れは、正直なところ演じていて精神的にすごくつらかったです(苦笑)。
坂東くんは、普段は陽気な感じで、現場でも合間に楽しくおしゃべりをしていたんですけど、そういうつらいシーンになると、坂東くん自身が持っているピュアさみたいなものが、原田という役を通して伝わってきて、坂東くんと一緒にできてよかったなと思いました。
――章子をはじめとする生徒たちと接するシーンはいかがでしたか?
(生徒たちは)みんな、オフの時も集中して役としているような感じで、ワイワイと話すようなことはあまりなかったです。真唯子が成長した章子と久しぶりに顔を合わせるシーンは、こちらが緊張したというか、ちょっと怖さを感じるようなところがありました。先生として、大人として自分がどう見られているのか? その緊張感が撮影の時だけでなく現場の空気として流れていたような気がします。

――改めて、本作が訴えかけるメッセージについて、いまのご自身のライフステージにあるからこそ感じたこと、教えられたことを教えてください。
私自身は、これまで幸せに楽しく生きてきて、この映画の中に出てくる家族とは違う部分が多いんですけど、でも親が子を思う気持ちというのは、きっと変わらないと思っています。酷い親もいますが、子どもは親しか知らないわけで、親の姿を見て、成長していくので、私自身、親としてちゃんとしないといけない――子に対して「こういうふうに育ってほしい」と思う以前に、自分がちゃんとすることで、子どもがそれを見て、成長していくんだというのを改めて強く思いました。

――劇中、つらい境遇の中で章子にとって、“未来のわたし”から届く手紙が希望の光となりますが、黒島さん自身は、つらい時や迷った時の人生の指針・希望となるような本や映画、ひととの出会いはありましたか?
本で言うと、三木清さんの「人生論ノート」という、すごくコンパクトで読みやすい内容の哲学の本があって、19歳くらいの時期かな? すごく忙しかった時期に出演した作品の中にこの本が出てきて、読んでみたら、すごく自分の支えになりました。「怒について」とか「嫉妬について」「希望について」と感情をひとつひとつに分けて、書かれているんですけど、ちょうどコロナ禍の時期にもう一度、読み直して、その後も繰り返し読んでいますし、「どうしたらいいんだろう?」と思った時に、いつでも取り出せるように持っています。

(C)2026 映画「未来」製作委員会 (C)湊かなえ/双葉社
――湊かなえさんの小説はこれまでにも数多く映像化されています。“イヤミス(読後にイヤな気分になるミステリー)“と評されることもあれば、ミステリーというジャンルを超えた人間の感情の機微の描写を支持する読者も多いですが、黒島さんは湊さんの小説の魅力をどのような部分に感じていますか?
私は、映画の「告白」の中の、爪や髪が伸びることで自分が「生きている」ということを実感するというシーンを強烈に覚えていて、人間が生きている姿をいろんな角度から表現されていて、今回の「未来」もそういう表現があって、そこが魅力だと感じています。「人間って生きてるんだ」というのをグッと感じられて、そこが好きです。
――最後に映画を楽しみにされている方に向けて、メッセージをお願いします。
難しいテーマではあるんですけど、こういう現状を知ってもらいたいし、それが世界を少しでも良い方向に変えるきっかけになるといいなと思っています。困っている人、助けを必要としている人に気づくということは、すごく難しいことだと思うけど、気づいて、ちょっとでも声をかけてあげられるような人間に私自身、なりたいなと思っています。この作品を見て、身近にいる人に少しでも目を向けて、優しくできたら、もっと良い社会になるんじゃないかと思うので、たくさんの人に見てもらいたいです。
