劇場公開日 2026年5月29日

「不思議なタイトルが投げかけるもの」箱の中の羊 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 不思議なタイトルが投げかけるもの

2026年5月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

過去にも是枝作品は様々な形式で、誰かの不在や喪失を浮き彫りにしながら「家族とは何か」を問い続けてきた。そこに近未来要素を加えた本作は、少年の形をしたヒューマノイドが夫妻の心を埋め、ゆっくりと気づきをもたらす。非人間的な存在が核になる意味では『空気人形』(09)に通じるが、どこか謎めいた響きを併せ持つタイトルは、人であれ、技術であれ、外から窺い知れない部分にこそ本質があることを提示しているかのようだ。中は見えない。だからこそしっかりと想像し、心を重ねる。その意味でも「箱」は本作の象徴であり、荷物の運搬から、暮らしを包む建築設計という仕事、ヒューマノイド、そしてこの映画の存在もまた観客へ思いを届ける一番外枠の箱、なのだろう。決してすべてを詳らかにはしないし、要点がはっきりしないと感じる人もいるかも。しかし、世の中の価値観が変わりつつある時代、ふと立ち止まって足下を見つめさせてくれるのは確かだ。

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牛津厚信