劇場公開日 2026年4月24日

ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー : インタビュー

2026年5月2日更新

ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー宮本茂クリス・メレダンドリが目指したクリエイティビティ

宮本茂
宮本茂

世界中で驚異的な大ヒットを記録し、日本でもNo.1ヒットを記録した「ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー」の公開を記念して、共同プロデューサーを務める任天堂の代表取締役フェローを務める宮本茂氏と、イルミネーション・スタジオの創業者でありCEOのクリス・メレダンドリ氏がインタビューに応じ、両者が目指すクリエイティビティなどについて語り合った。(取材・文・写真/壬生智裕)


●任天堂&イルミネーションの再タッグ、マリオに訪れた更なる“進化”

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――任天堂とイルミネーションによるマリオの映画も今回で2作目となりますが、本作は任天堂のIP全体においてどのような役割を果たしているのでしょうか?

宮本茂(以下、宮本):過去のキャラクターで言うと、これまではドット絵だったり、割と狭い範囲で決まった動きを繰り返しているキャラクターばかりだったんですが、映画になることで本当に自由に動き回れるようになって。そういう意味では、それぞれのキャラクターが僕らが思っている以上に生き生きとしていましたね。マリオが3Dになったときにも進化を感じたんですが、今回は映画の中で「人になった」と思えるような、それはどのキャラクターもそうですが、それぐらいの進化を果たしたなと感じています。

それと今回、改めて分かったのは、イルミネーションの方たちが僕ら以上にマリオのことをよく知ってくれているということ。こんなにキャラクターがいたのか、と思うくらいたくさんのキャラクターが出てきて、最初から全員がそこにいたかのようにワーッと集まっている。マリオの世界ってこんなに広がっていたんだ、と改めて40年の歴史を思い知らされましたね。

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――先行して公開された国では記録的な大ヒットを果たしましたが、日本の興行に期待するところは?

宮本:これはクリスさんとも話したことですが、アメリカで数字が出ているので、日本がそれについていけなかったらどうしよう、というプレッシャーがありました。

●「ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー」の作り方は?

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――マリオの世界観やキャラクター設計などはどのようにしてやり取りを行ったのでしょうか?

クリス・メレダンドリ(以下、クリス):任天堂さんとは、最初のアイデアからストーリーまで終始、綿密なやり取りを進めていきました。ところどころでフィードバックや、お互いのアイデアを共有していったんです。これらはZoomだけではなく、定期的にしっかり対面で顔を合わせたりして進めていきました。音楽制作においても、宮本さんだけでなく作曲家の近藤浩治さんにもしっかりと見ていただくなど、綿密なやり取りをしながら最後の最後まで一緒に作り上げています。

宮本:1作目の時からそうだったんですが、せっかく日本とアメリカで作るんだったら、アメリカのものを単にローカライズするというような流れにはしたくなかったので、1作目は(日本語版と英語版と)脚本を同時進行で制作しました。僕ら自身が映画の仕上がりを予想するためには、翻訳されたものではなく日本語版の脚本でちゃんと作り込んだものの方がいいから。世界中のいろんな国ではローカライズされたものでしたが、日本だけは日本語バージョンで作る、というお話をさせていただきました。ただし今回は、1作目でパターンがわかっていたので、プロジェクトの途中までは一緒に英語で進めて、途中からそれを日本語でもう1回仕上げ直すという形で進めました。

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日本語版の脚本は昔から交流があったヨーロッパ企画の上田誠さんにお願いしました。彼は舞台出身の方なので、自然な会話で脚本を仕上げていくんです。僕らはマリオにもそういう感じの会話をしてほしかった。どうしてもローカライズだと会話のテンポが違ってくるので、そこは自然な会話に仕上げました。

また、日本語版の声優さんたちにも「この絵をもとに日本語で面白いものを作っていけたらいいので、アドリブは大いに結構です」と伝えました。声優さんたちも「え、本当にやっていいんですか?」と新鮮に感じていただいたようですが、結果として非常に生き生きとした会話に仕上がったと思います。

●ピーチ姫&ロゼッタ――ヒロインの描き方について

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――ヒロインの描き方について教えてください。昔のゲーム版では「救出を待つヒロイン」というイメージがありましたが、映画版のピーチ姫やロゼッタは心身ともに非常に強いキャラクターになりました。この変化についてどう思われますか?

宮本:ゲームを作るうえでは「分かりやすさ」が一番なんです。予想外の展開があったらプレーヤーが戸惑ってしまうので。たとえば「ドンキーコング」だったら、「女の子がさらわれたから助けに行くべきだ。だから上へ行くゲームなんだ」という記号としてヒロインを置いていました。それが現代の女性像と合わないということは散々言われてきましたが、そこはゲームの構造上変えられないなと思っていました。ですが映画をやる時には思い切り変えようと思って、クリスさんたちと話し合いを始めたんです。

1作目では分かりやすく「戦う女性」ということに特化したのですが、2作目も同じことをしていては薄っぺらくなってしまう。ですから今回はお姫様としての悩みとか、マリオとピーチ姫の微妙なすれ違いなど、女性らしい思いや葛藤を描き込むことができたので、1作目よりも随分と豊かになったと思います。

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クリス:観客の皆さんが、ピーチ姫やロゼッタといった女性キャラクターの強さを称賛してくださるのは、とてもうれしいこと。任天堂のファンには女性や女の子もたくさんいるんです。そんな彼女たちが映画を観て、ピーチ姫やロゼッタの強さを目の当たりにし、「ここがすごく良かった!」「楽しかった!」と喜んでくれる。これは本当にやって良かったなと思いますし、私たちが選んだ方向性は間違いじゃなかったなと思っています。

●「スターフォックス」フォックスが登場! この“登場”には既存のルールを変える必要があった

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――本作では「スターフォックス」のフォックスの登場が大きな話題になっています。英語版の声優にハリウッドスターのグレン・パウエルさんが起用されていますが、どういった経緯で決まったのでしょうか?

宮本:今回「ギャラクシー」を舞台にするにあたり、普通のSFに出てくるようなものじゃつまらない、マリオらしい「ギャラクシー」の世界をどうしたらいいかと話していた時に、いきなりイルミネーション側から「フォックスを出したらどうか」と提案があって。「これは面白い!」と思いました。

ただ、任天堂には「違うゲームのキャラクターを(同じ世界に)共存させない」というルールがあって。しかもそれを言ってきたのが、僕自身だった。だからこれはルールを変える必要があるな、と思い、これまでルールを守ってやってきてくれた人たちに「ちょっと崩すけどいい?」というロビー活動を開始しました。グレン・パウエルさんの起用についてはクリスさんが詳しいです。

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クリス:実は前作の公開後にグレン・パウエルさんから私の方に直接電話があったんです。「今、任天堂と一緒に映画を作っているんですよね。自分がどれだけ『スターフォックス』のキャラクターを愛しているのか、どうしても知っておいてほしいんです!」と熱烈なラブコールがあったんです。その時は特に「スターフォックス」の映画を作ろうという計画はなかったのですが、今回フォックスを登場させることになったとき、真っ先に彼の顔が浮かびました。グレンさんだけでなく、ロゼッタ役のブリー・ラーソンさんはアメリカでも有名な任天堂ファンですし、ドナルド・グローヴァーさんからもヨッシーを演じたいと電話があった。

いつもはこちらから、この作品に出てもらえませんかとお願いすることが多いんですが、任天堂の作品となると、俳優さんや声優さんの方から出たいと電話がかかってくる。それはすばらしいことだなと思っています。

宮本:本当にラッキーですよね。イルミネーションのアニメーションを作っているスタッフもそうですし、キャストの皆さんも、日本やハリウッド関係なくみんなマリオファン。だからその中で何かやれるなら出たいっておっしゃっていただいて。僕はもともと漫画家になりたかったんですけど、多分僕がひとりでやってもそんな世界にはならないわけで。本当にチーム全員がマリオを愛しているからこそ、新しいジャンルができたんだろうなと感じています。

宮本茂「大人も子どもも『同じように楽しめるもの』を作りたい」

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――もちろんずっとマリオが好きで、ゲームをずっと遊び続けてきたという人もいると思いますし、かつてゲームを遊んでいたという人も多いと思います。幅広い世代に愛されているのがマリオの魅力かなと思います。

宮本:昔ちょっと遊んだことがある、というだけでも本当にありがたいんですよね。知ってもらえるというだけで本当にありがたい。映画を観れば全部知っていたような気分になれるので、ぜひ観てほしいですね。任天堂のキャラクターは「親子で楽しんでもらえる」というところを1つの目標にしてきましたが、今やもう3世代。親と子ども、おじいちゃんおばあちゃんも含めて、3世代でコミュニケーションできる可能性を持っているのが、任天堂のキャラクターの魅力かなと思っています。

――たとえば前作でも、劇場で子どもたちがケラケラと笑いながら映画を楽しんでいる空間がありましたが、子どもに向けて、どのようなモチベーションで作品を作られているのでしょうか?

宮本:僕は、大人も子どもも「同じように楽しめるもの」を作りたいと本当に思っているんです。子どもって、大人が思っている以上に知恵を持っています。ちゃんと自分で考えているし、痛い、痒(かゆ)いことも分かっているし、豊かな感情もある。ただ「知識が少ないだけ」なんですよ。

だからこそ、「おならの音を鳴らせば子どもは笑うだろう」みたいな安易なことは絶対にやりたくない。だからクリスさんには「下ネタ禁止令」を出してお願いしています。下ネタ禁止令を出しているから今作にワリオは出ないんです(笑)。というのは冗談ですが、子どもはちゃんと分かっている、と思って作っているんです。われわれはアクションを中心にしてつくっているし、大人も子どもも理解できる材料をもとに組み立てれば、全員が決して退屈しないものが作れると信じています。

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クリス: 実は先週末、ロサンゼルスの映画館で観客と一緒に映画を観たんです。といってもだいたいは映画を観るというよりは、お客さまの反応を見ているという感じなんですけど、その時本当にうれしかったのが、大人の方はもちろんのこと、子どもたちが心の底から楽しんで反応してくれて。その姿を見るのは本当にうれしかったなと思っています。

宮本さんを中心とした任天堂のチームは、何が面白いのか、何がクリエイティブなのか、そういったアイデアがどんどん湧き出てくるんです。そういった方たちと一緒に制作を進めることができたからこそ、大人、子ども関係なくみんなが楽しめる作品になったんだと思います。

宮本さんの素晴らしいところは、「子どもは何を喜ぶか」をわざわざ計算して考えないこと。自然とこれが楽しいよねといったアイデアが湧き出てくるんです。今回の映画製作においては、真ん中に宮本さんがいて、そのまわりの製作陣が宮本さんの考えをしっかりと理解する、というプロセスで進めていきました。だいたいの映画製作のプロセスだと、子どもたちが何を好きなのかと、無理に合わせていくところから考えはじめてしまい、そうするとだいたい平たんでつまらない作品になってしまうものなんです。でも今回はそういうことがまったくなくて。宮本さんとしっかりと一緒に進めることで、皆さんが夢中になれる作品にたどり着けたんだと思います。

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