「君は小宇宙を感じたことがあるか?」サンキュー、チャック モアイさんの映画レビュー(感想・評価)
君は小宇宙を感じたことがあるか?
ポスターの印象でミュージカルはいいや…。と思っていた本作。実はスティーブン・キング原作と知っての鑑賞です。
映像作品を通してでしかスティーブン・キング作品に触れてはいませんが、相変わらず今回もコチラの興味をグッと引き寄せる設定、展開で、この先どうなっていくのか?とドキドキさせられる冒頭。
誰かが宣告した訳ではないけれど誰もが終わりを確信する世界で、自分はどう過ごすだろうか?ガソリン確保してレザー&スタッズに身を包み、V8エンジンのモンスターマシンでピリオドの向こう側を目指す様なバイタリティはないので、とりあえず寝て過ごしてそう……とか思いながらも、やっぱり当たり前に人が生活して成立し、人が働いて維持されている社会は尊いなぁ〜なんて感じているのです。
この冒頭部分だけでも1本いけるような感じでしたが、この今まさに終わろうとしている世界の真実が透けて見えた所から本作はその様相をガラリと変えていきます。
そして、ただ自分が理解できなかっただけかも知れませんが、鑑賞者側のその時の心持ちで如何様にでも解釈が変わりそうなこの映画。久しぶりに、この作品はこういう風に見て!楽しんで!という方向性が、いい意味で曖昧な作品を観た気がするのです。
たぶん私が自分の人生にロクに向き合わずにダラダラ日々をやり過ごしているからなのでしょうが、そういう人間からすると本作は間違いなくホラーです。
誰の人生にもいつかは必ず訪れるその時の事を私は意識して日々を過ごしていません。ただ何となく自分のその時はまだだいぶ先の事なのだろうと、昨日と同じ今日を積み上げてきたこれまでの歳月からそう確信しているのです。
しかしそんな私に本作はやがてくるその時の事を思い出させるのです。果たして私は自分に訪れるその時に「ありがとう」なんて言ったり、言ってもらえたりするのだろうか?せいぜい「最悪」くらいの言葉しか出てこない様な気もするのですが、そう思うのならもっとちゃんと生きとけよ。なんて思わされて億劫な気持ちにさせられます。
それならチャックはどうだったのか?17、8のあの日、丸屋根の部屋で見たものに対して『自分の人生は特別だ、価値のあるものだと』告げた彼ですがその後はどうだったのか?祖父の諭した通りに生きた彼にとって、自分の人生が特別で価値のあるものと感じられたのは結局、ダンスパーティーで年上のイケてる子をリードしたあの夜だけだったのかも知れないのです。
鏡に映る自分の老け具合を見ては丸屋根の部屋で見た物を意識してきただろう彼が、出張先の田舎町の通りで踊った事以外に何をしていたのかは描かれていません。チャックには妻も子供もいますが、それも家族からは嫌われてはいなさそうと感じる程度にしか描かれていないのです。チャックにとって妻子との生活は円満ではあるものの自分の人生を特別たらしめるものではなかったのかな?と邪推してしまうほどです。たぶん敢えて描かれていないのでしょうし、「ありがとう」なのだからポジティブなものだったのだろうと思うのですが、この何とも割り切れないモヤモヤした気持ちにさせるところに、いかにもスティーブン・キングらしい意地の悪い面白さを感じるのです。(原作に触れたことは無いのですが…)
そして、その時が訪れるまで全力で走り抜けた!みたいなものを見せられるよりこちらの方が私は好きですし、『宇宙全体よりも広くて深いもの それはひとりの人間のこころ―』とは ささきいさお が唄った「超人機 メタルダー」(87年~88年)のオープニングの一節ですが、どんなに自分にとって希薄な存在、例えば通りでたまたますれ違うだけの顔も覚えていない様な人でも、その内側にそれぞれの小宇宙(コスモ)を抱いている事を思うと不思議な気持ちになりますし、またどんな人生を歩んでいても宇宙カレンダーに当てはめてみれば人の一生など1秒にも満たないという考え方は、『人の命は束の間で 星の一瞬のまばたきのようさ 無限の物差しで測ってみれば誰だって“点”にも満たない長さだよ―』と唄ったダウン・タウン・ファイティング・ブギウギ・バンドの「OUR HISTORY AGAIN -時の彼方に-」(80年)の一節に通じるものがあり、そういう考え方は個人的には切ないというよりも、何かとても気が楽になるのです。
キャスティングに至るまで 完全に狙ってるのが明白なので
監督がめちゃくちゃこだわって作ってるのが分かるので素晴らしいですよ🫡
モアイさま
コメント返信、ありがとうございます🙂
私は平成世代なので、NHKの大河ドラマ=時代劇だと思っていた位で、同じ目線でお話するのは難しそうですから、お返事はもう大丈夫です。
大河ドラマの歴史で、原作無しオリジナル脚本で明治維新を描いた唯一無二の作品で、有名な武将や英雄ではなく、名も無き庶民たちが初めて主人公になった、伝説的な作品だと知って配信で試聴しました🤔
> ドラマ版シャイニング
! そんなものがあるんですね。それは「こういう話なんだよ」ってのがわかって、いかにもドクタースリープとの繋ぎもよさそうですね。いつか観てみたいです
共感どうもです。
チャックにとって妻子との生活は円満ではあるものの自分の人生を特別たらしめるものではなかったのかな?⇒だから、ダンスシーンは出て来ても家族とのシーンがほとんど出て来ないのだと思いました。
モアイさま
コメントありがとうございます🙂
>ダウン・タウン・ファイティング・ブギウギ・バンドの「OUR HISTORY AGAIN -時の彼方に-」(80年)
もしかしたら…と思って調べてみたら、やっぱりNHK大河ドラマ「獅子の時代」の挿入歌でした。
幕末維新と戦国時代が好きで、大河の旧作を配信で見ていたりしたので、ロックのギターと英語のサビが印象的でした。
>『人の命は束の間で 星の一瞬のまばたきのようさ 無限の物差しで測ってみれば誰だって“点”にも満たない長さだよ―』
こんな歌詞だったんですね…「OUR HISTORY AGAIN♪」しか記憶になかったので、こちらこそ気付きのあるレビューをありがとうございました😙
共感ありがとうございました。
靴が擦り切れるほど、練習したという主演男優。ダンスシーンありきで作られた映画というのが残念です。
秘密の部屋のくだりを拡大して、死生観にまつわるエピソードを盛り込むべきだとおもいました。
ひとりひとりの頭の中は、それぞれが別個の宇宙で… というのは実際にそうかもしれないひとつの姿かとは思いますが、その中の本人ではない構成員がみんな冒頭の第3幕みたいな思いをするのであれば、たしかにホラーですね。こんなこと考えたことなかったからプチ衝撃です。
モアイさんのレビューのおかげで心が穏やかになって、普通の人間であることは悪くない、芝居や映画のような波乱万丈とは縁がないのが自然なんだと思いいたりました
モアイさま
共感ありがとうございます🙂
>そういう人間からすると本作は間違いなくホラーです。
「感動のミステリー」という宣伝コピーですが、私はキングのホラーだと思います。
『サンキュー、チャック』の米国のスクリーンプレイより。
第二章の「エルドラド」の街で、チャックとダンスをした赤いワンピースの女性は、「若き日のばあば」。
第三章と第二章のインラインスケートの女の子は、「生まれてこなかったチャックの妹」…
皆さんが絶賛されている第二章の路上のダンスは、チャックが「夢」の中で「夢」を叶えたんだと思っています🫡







