プラダを着た悪魔2 : インタビュー
メリル・ストリープ×アン・ハサウェイ 大ヒット作続編での変化、女性の連帯、キャリアと仕事へのモチベーション

2006年の大ヒット映画「プラダを着た悪魔」の20年ぶりとなる続編映画「プラダを着た悪魔2」が、5月1日から日米同時公開となる。ミランダ役のメリル・ストリープ、アンディ役のアン・ハサウェイが4月にそろって来日し、日本メディアの取材に応じた。
<あらすじ>
ニューヨークの一流ファッション誌「ランウェイ」のカリスマ編集長として、ファッション業界の頂点に君臨するミランダ。かつてそのアシスタントとして完璧主義な彼女のもとで奮闘する日々を過ごしたアンディは、現在は社会派のジャーナリストとして活躍していた。しかし、突然のキャリア転換を余儀なくされ、「ランウェイ」編集部に舞い戻ることになる――。

(C)2026 20th Century Studios. All Rights Reserved.
前作から20年という歳月が流れた。加速するデジタル化と資本主義経済社会の中で、ファッション業界もその在り方の変化を余儀なくされており、今作はそんな2020年代をリアルに捉えた物語となっている。
ストリープ:「前作からすべてが変わりました。当時は誰もがスマホを持つような時代ではありませんでしたし、ビジネス面でも、企業のお金の動かし方が変わりました。企業のトップであるということは、多くの人たちの生活に責任を持つということです。今回の脚本が興味深いのは、そんな私たちの世界の経済的基盤について触れている点です」
ラグジュアリーブランドの広告がふんだんに掲載され、トップクリエイターとの仕事、海外ロケなど多額の制作費をかけて作り上げた特集、グラビアが売りの老舗ファッション誌は、ウェブとのハイブリッド展開となり、様々な媒体において予算が削減される時代だ。このようなメディア業界のシビアな実情がある中、「ランウェイ」、そしてミランダはどのように描かれるのだろうか。

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ストリープ:「今回の脚本には社会問題が包括されていて、(前作の時代から)すべての人間の生活が変わってしまっていると感じました。ミランダはまだトップにいますが、彼女が生きたファッション界は激変し、その足元も揺らいでいます。それはショービジネスもジャーナリズムも同じです。この変革期のミランダというキャラクターを演じるのは、非常に興味深いことでした」
時代の変化とともに、自身のキャリアの変化も経験するキャラクターを演じたハサウェイは、アンディの良心、ポジティブで柔軟な性格を強調する。
ハサウェイ:「デジタル革命が起きる前にキャリアをスタートさせたキャラクターが、社会の変化が進む中でどう生きてきたのかという点を考えるのが興味深かったです。この20年で起きたことを振り返り、デジタル革命が我々の生活にどんな影響を与えたのかを、今ようやく冷静に確認できるタイミングなのだと思います」
「さらに、今はAIという新しい革命がやってきていて、それとどう付き合っていくのかも考えなければなりません。私が演じるキャラクターは、自分の信じていた世界が次々と変わっていく経験を繰り返しながらも、決して希望を捨てず楽観的です。周りにはあまりいないような素敵なキャラクターです」

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美意識が高く妥協を許さない編集長ミランダと、図らずもファッション界に足を踏み入れることになり、自分にとっての“仕事”というものを見つめていくアンディ。前作では緊張感のある二人の関係が描かれたが、今作ではその距離は縮まるのだろうか?
ストリープ:「1作目の時は、最初の数日は(アン・ハサウェイら他のキャストと)仲良くしていましたが、役に入ってから距離を保つようにしました。もちろん楽しくはありませんでしたが、役の上では効果があったと思います」
「今作ではミランダの内面も変わっています。彼女は今76歳で、グローバル企業のトップにいる。これは、ものすごく大きな仕事です。脚本は2年前に書かれたものですが、現実の世界がそれを追い越していくような感覚がありました。そして、彼女の信念は“常に二歩先を行くこと”です。揺らぐ地面の上でトップに立ち続けるために、彼女は常にそう考えているのです」

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華やかなファッション業界と出版界で学んだアンディは、自分の心に従った道へ転身する……という場面で前作の幕は閉じた。この続編ではハサウェイ自身が、自らの意思を持って働くアンディとして、脚本に意見を出すこともあったという。
ハサウェイ:「今回は運良く、脚本家のアライン・ブロッシュ・マッケンナもデビッド・フランケル監督も強いコラボレーション精神を持っており、何でも話し合うことができました。この20年、アンディにどんな変化があり、進化する世界でどうサバイブしたのかを議論しました。具体的な内容は言えませんが、私自身、初期のとある設定に対して『それはやめたほうがいいのではないか』といった意見を出し、キャラクターに影響を与えることができたかもしれません。でも、もともと脚本は美しく描かれていたので、それを楽しんで演じることができました」

そして、「1作目でミランダというキャラクターと過ごした時間は、私にとって宝物です。その後の20年間もお付き合いは続いています」と、本作が世代の異なる二人の俳優に絆をもたらした。
映画の中のキャラクターとは対照的に、取材中の二人は互いに冗談を言い合い、ガールズトークさながらに、おしゃべりは止まらず息の合ったやり取りが続く。ちなみにこの時間に取材した記者はすべて女性だった。ストリープは席に着くや否や「皆さんのファッション素敵ね!」と、聖母のようなほほえみで場を和ませ、20年以上前、他作品での初来日時取材では「当時、私を囲んだ日本の記者は全員男性だったのですよ」という逸話も披露してくれた。
公私において支えあうことも、ライバルになることもある女性同士の関係、連帯も本作のテーマだ。ミランダとアンディだけでなく、エミリー役のエミリー・ブラント、そしてルーシー・リュー、ヘレン・J・シェンら新キャストの存在感も見逃せない。

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ストリープ:「私は女性の友人に支えられています。彼女たちがいなかったら生きていけないでしょう。18歳の頃からの仲間がいて、今でも年に2回は一緒に過ごします。みな職業も人格もバラバラですが、自分自身に戻れる大切な存在です。もちろんお互いに厳しい面もありますが、嫉妬心も含め、みんなうまくやっていきたいと考えるものです。私は女性史ミュージアムの理事もしていて、“男性は女性から指示されることが嫌いなもの”というような話を聞くこともあります。依然として大変なことは多いですが、前進はしていると思います」
ハサウェイはオール女性キャストの犯罪エンタテインメント「オーシャンズ8」(2018)の現場の思い出を語る。「初めてヘアメイク用のトレーラーの中に入った時、アイコンのような女性たちがそれぞれのやり方で準備をしていて、とても心地よい空間でした。ハリウッドは男性が大多数を占める世界ですが、2026年現在はそうした女性主導の空間も増えています。以前、オリビア・ワイルドが言っていたのですが、『私たち女性は競い合っていると思い込まされていたけれど、本当は協力し合えるコラボレーターなのだ』と。女性が多く集まると、より自分らしくいられます。もともと私たちの場所であった場所を、普通に私たちが占めればいいだけのこと。それは上手くいくはずです」

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あまたの映画作品で俳優賞を受賞し、アカデミー賞では俳優としてのノミネート史上最多記録を持つストリープ、ハサウェイもオスカー俳優として輝かしいキャリアを絶えず更新している。この20年を振り返り、仕事に対するモチベーションをこう語る。
ストリープ:「今、私には6人の孫がいます。小さい子がいると、ものすごく時間を取られてしまいます。その瞬間を生きるだけで精一杯で、どっと疲れ果ててしまうこともあります。後悔しないように生きています。もちろん、いくつか後悔はあります。しかし、間違いを犯したとしても、なるべく正して楽観的にいるようにしているんです。人生は短いですから」
「今は仕事を選べる贅沢な立場にあります。家族を養う責任も終え、自分に決定権があります。この作品が文化や芸術に貢献できているか、と考えます。孫と一緒にいたい、という気持ちを抑えてでもやりたい仕事かどうかが、今の私の基準です」
ハサウェイ:「私も同様に、後悔を引きずることはなく、どんなことがあったのかを自分で確認して、前へ進むようにしています。若い頃、母が良いアドバイスをくれました。『幸運とは、準備ができているところに機会が恵まれること。その両方が出会った時に生まれるものだ』と。素晴らしい監督や俳優と仕事ができて、本当に恵まれていると思います。チャンスが巡ってきた時に、ちゃんと準備ができているように心がけてきました」
「頑張らないことなんてあり得ないと思っています。役者として成功し、それを何十年も継続できるのは稀有なことで、本当に運が良いことです。いつまで続けられるかは誰にも分かりません。だからこそ、自分がコントロールできる仕事を頑張ることに集中したいのです。そして、作品に招かれることに感謝し、それをモチベーションとしています」
