「第二次薔薇戦争」ローズ家 崖っぷちの夫婦 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
第二次薔薇戦争
夫婦喧嘩は犬も食わぬと言うが、こんな夫婦喧嘩なら例え闘犬であっても尻尾を巻いて逃げ出すだろう。
ある夫婦の喧嘩の顛末を笑っちゃうくらいの過激さと笑えぬブラック・コメディで描いた1989年の『ローズ家の戦争』。
夫婦喧嘩がこんな事になるなんて…!
『ロマンシング・ストーン 秘宝の谷』及び『ナイルの宝石』のトリオの共演3作目で、マイケル・ダグラスとキャスリーン・ターナーの怪演、監督も兼任したダニー・デヴィートの才もインパクトあった。
そんな壮絶夫婦喧嘩が再び…! “第二次薔薇戦争”勃発!
テオとアイヴィの夫婦。
出会いは一瞬の一目惚れ。結婚は即決。
テオは建築家、アイヴィは料理が趣味。いい家に住み、2人の子供に恵まれ、テオはアイヴィに店をプレゼントするなど不満何一つなく幸せ…に見えた。
ある嵐の夜が夫婦の明暗分けた。
嵐でテオが手掛けた建築物が“沈没”し、名声失墜しクビに。
嵐でチョー暇だったアイヴィの店に客が押し寄せる。その中に著名料理評論家が居た事から、アイヴィの店は一躍大評判大盛況に。
これを受け不本意ながらも、テオが専業主夫になり、アイヴィが働きに出る事に。
最初は慣れぬ子供の面倒や家事に悪戦苦闘のテオだったが、しっかり子供たちの成長を請け負うように。
アイヴィの店は好調続き、支店も出す事に。
担当変わっても調和を保っているように見えたが…、その内では沸々と。
アイヴィは仕事は順調だが、子供のイベント事を欠席するなど家族の傍に居てやれない。その事をテオに責められる。
建築の仕事への未練が残るテオ。自分はずっと家庭に縛られているのに、アイヴィは各地にお呼ばれ、贅沢や豪華な接待。
そんなテオにアイヴィは、かつてテオが自分にしてくれたようなプレゼントを。私たちの家を建てて。
建築家の血が騒ぎ、家造りに没頭。こだわり過ぎて、ついつい予算過多。これがまた…。
それでもまだ夫婦関係は保たれていた。いつしか口喧嘩は多くなったが。
子供たちの勧めでセラピーを受ける事に。この時、互いへの不満を吐き散らす。
子供たちが家を出る事に。辛うじて夫婦を繋ぎ止めていたものが無くなり…。
テオが建てた新築豪邸に友人らを招いて会食。遂にここで、開戦の火蓋が切られた…!
それまでの“口撃”から容赦ない相手の評判落とし。
テオはアイヴィの店の料理に“トッピング”を。アイヴィはSNSにテオのディープフェイク映像を。
争点は店と家の所有権。絶対に店を渡したくないアイヴィと絶対に家を渡したくないテオ。
時に相手の命に関わる手段も。大人気ないどころではなく、犯罪でしょ!
それでも譲らない。
とうとう家という戦場で、取っ組み合い、物理的攻撃、逃げる相手を追い掛け、銃を持ち出し…。文字通りの“夫婦戦争”!
笑えるけど、笑えない。
それでも面白く魅せたのは、ベネディクト・カンバーバッチとオリヴィア・コールマンの共演と巧さ。
コメディの名手(『オースティン・パワーズ』『ミート・ザ・ペアレンツ』のジェイ・ローチ)とブラック・コメディの脚本(『女王陛下のお気に入り』『哀れなるものたち』のトニー・マクナマラ)のタッグも個人的に乙。
夫婦の問題に、米英人それぞれの考えや価値観も巧みに。
だけどやはり、オリジナルの方がインパクトあった。ラストも含めて。
夫婦戦争の果てに、テオとアイヴィは再びお互いの愛に見つめ直す。オリジナルとは全く違うハッピーエンドになるかと思いきや、ガス漏れに気付かず、ドッカ~ン!…を思わせる真っ白画面で終幕。
これもこれでシュールだが、夫婦はすでに死亡していて、顧問弁護士が回想形式で語るオリジナルの方が、“何があった?”と興味を惹き付ける一枚上手の巧さがあった。
こんな夫婦戦争と顛末を見てしまうと、素直に思ってしまう。
結婚って…?
愛し合って一緒になったんじゃないの…?
見たら夫婦の関係が気まずくなりそう。
いや、それだけじゃないかも。
教訓や考えや見直すきっかけにも…?
だって、世の夫婦の皆さん、こうはなりたくないでしょ?
