「吹奏楽アニメの顔をした“中間管理職”映画」最終楽章 響け!ユーフォニアム 前編 こひくきさんの映画レビュー(感想・評価)
吹奏楽アニメの顔をした“中間管理職”映画
本作は吹奏楽アニメの皮を被った“中間管理職地獄映画”である。
もちろん、京都アニメーションによる圧倒的な映像美や演奏シーンの完成度は言うまでもない。楽器を構える指先、ピストンの音、張り詰めた空気、誰かが息を飲む気配まで含めて、「映画館で観る意味」がきちんと存在する作品になっている。
しかし、本作が本当に恐ろしいのはそこではない。
この映画、年齢を重ねた人間ほど刺さるのである。
松本美知恵先生が「歳を取るとな、若者が頑張ってるだけで涙腺が緩むもんなんだ」と作中で語っていたが、本作を観て流れる涙は、まさにあれだ。青春の眩しさに泣いているのではない。正解の分からない世界で、それでも前に進もうとする若者たちの姿に、自分自身を重ねてしまうのである。
今回の主役は、言うまでもなく黄前久美子だ。しかし、彼女はもはや1期の“ちょっと冷めた観測者”ではない。100人を超える吹奏楽部を束ね、全国金賞を目指し、顧問・滝昇と部員たちの間に立ち続ける“部長”である。
つまり完全に中間管理職だ。
上からは「全国金賞」という成果を求められ、下からは不満と不信をぶつけられ、横を見ると高坂麗奈という理念100%のエースがいる。しかも自分自身も奏者であり、評価される側でもある。社会人なら、この構造だけで胃が痛くなる。
そこへ現れるのが黒江真由だ。
このキャラクターが本当に凄い。悪人ではない。むしろ空気を壊したくないし、誰かを蹴落としたい訳でもない。しかし、彼女の存在そのものが組織を揺らす。
北宇治高校吹奏楽部は、ずっと「上手い人が吹くべき」と言い続けてきた。だが、本当に圧倒的に上手い転校生が現れ、自分たちの“仲間”が落ちる側に回った瞬間、実力主義は急に血の通った問題になる。
これは吹奏楽の話であると同時に、会社組織の話でもある。
優秀な中途人材が入ってきた時、既存メンバーはどう感じるのか。成果主義を掲げる組織は、本当にそれを最後まで貫けるのか。理念と人情は両立するのか。本作は、その極めて現実的な問いを、容赦なく観客へ突きつけてくる。
だから本作は、単なる青春映画では終わらない。
久美子の最後の演説も、別に何も解決していない。わだかまりは残っているし、不満も消えていない。ただ、それでも「このメンバーで全国金賞を取りたい」という一点だけが共有される。
組織とは、本来その程度の“不完全な一致”でしか前へ進めないのである。
そして、その不完全さを抱えたまま、次の曲が始まる。
正直、後編が恐ろしい。だが同時に、これほど続きが気になる作品も久しぶりだ。
ただ、ひとつだけ欲を言えば――後編上映後にはぜひ、“滝昇視点”の『最終楽章』を観てみたい。
正解のない中で、何を見て、何を捨て、何を信じて、あの選択をし続けたのか。
あの静かな顧問教師こそ、実は本作最大の「孤独な指揮者」なのかもしれない。
自分が会社員で中間管理職やってますが、マジで久美子やれると思いますよ
まずメンバーの傾聴から入ってるし
部の1年間の目標立てて、メンバーに挙手させてるしで(まぁこれは代々の部長の恒例だけど)
コーチング、コンフリクト、プロマネ等の一通りの研修受けてるんじゃないかってね
会社組織なら、利益が第一優先なのは当たり前だし、スパンも数十年と長いのでまだマシな気がします。
たった3年、その中で懸けた時間や気持ちを捨てきれない部活ならではの部分が痛烈でした。
ずっと久美子視点で描かれ、絶対的な正解としてあった滝先生の迷いに彼女が気付いたことも大きかったと思います。
滝先生目線だと、また全然違う物語になるのでしょうね。
黄前さんに中間管理職の悲哀を重ねる発想、とてもユニークでした。
私は単純に登場人物たちがまぶしいような気持ちで見ましたが、いろいろな見方があるものですね。
確かに先生視点の映画、見てみたい気がします。
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