コラム:細野真宏の試写室日記 - 第307回

2026年2月27日更新

細野真宏の試写室日記

映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。

また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。

更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)


試写室日記 第307回 春休み映画前半戦勝者は「ドラえもん」「ウィキッド」、それとも…?

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今週末2月27日(金)から「映画ドラえもん 新・のび太の海底鬼岩城」が公開されますが、前作の「映画ドラえもん のび太の絵世界物語」は公開日が昨年の3月7日(金)だったので、1週間前倒しがなされた状態となっています。

いずれにしても3月に入るので、この「映画ドラえもん」から春休み期間を考慮された「春休み映画」の戦いの火蓋が切られることになります。

そこで今回は3月公開の作品を中心に春休み映画前半戦の勝者について考えてみます。

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まずは最大の期待作品が「映画ドラえもん 新・のび太の海底鬼岩城」なので、こちらから見ていきましょう。

特に前作の「のび太の絵世界物語」は歴代最高と言えるほどの傑作だったので期待がかかります。

そして本作は長編映画第4弾「映画ドラえもん のび太の海底鬼岩城」(1983年)のリメイク作なので、物語のクオリティーも担保されているはずなのです。

ところが、実際に見てみると、私はリメイク版で初めての違和感を抱いてしまうことになりました。

作画についてはキチンと力を入れられていて良かったと思います。

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ただ、なぜか脚本において、論理的に弱い展開や唐突さなどが目につき、作品の出来が良いと思えませんでした。

言っていくとキリがないのですが、最初の「のび太の宿題」だと、全教科全く手を付けていなかったにも関わらず、みんなに協力してもらって進みが早くなるのはいいのですが、1日で全教科の宿題が漏れなく終わるというのは極端すぎるかと思うのです。

これは優等生のしずかでも無理な物量なのではないのでしょうか?

しずかの言動でも後半で、強力な武器を持っている敵に対して、実態がわからないにもかかわらず「昔に女性が捕虜になったケースが(1件)あったので自分も殺されずに捕虜にするはず」といった非常に危ない判断のもと自ら捕虜になろうとするなど、危うさが付きまとったような不思議な展開ばかりなのです。

リメイク版であれば、仮に過去作で唐突な箇所があったとしても、それを上手く流れるようにするのが本来の作り方だと思うのですが、残念ながら本作ではそういう作りではなかったようです。

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それでは本作の興行収入はどのようになるのでしょうか?

まず、過去最高の完成度だった昨年の「のび太の絵世界物語」は興行収入46.1億円と健闘しましたが、歴史最高の53.7億円まではいけずに歴代3位で終わってしまいました。

この事例から、どうやら「映画ドラえもん」については、「作品のクオリティーで動く観客層」はそれほど多くないということが言えそうです。

これは、ここ数年の動きを見ても同様で、3年前の出来の良かった「映画ドラえもん のび太と空の理想郷(ユートピア)」は興行収入43.4億円、2年前の出来が良いとは思えなかった「映画ドラえもん のび太の地球交響楽(シンフォニー)」は興行収入43.1億円のように、作品のクオリティーと興行収入はさほど比例していないのです。

このように良くも悪くも「映画ドラえもん」は固定層が多く、興行収入が安定しているのです。

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ただ、前作の「のび太の絵世界物語」をテレビ放送などで見た人を中心に「映画ドラえもんは面白い」とポジティブに考えて、本作のプラスになる動きは意外と少なくないのかもしれません。

その一方で、ドラえもんのリメイク版は「(リメイク前の作品で)すでに見た作品」と見なされてスルーしてしまう流れが出るのも恒例の出来事となっています。

これらを考えると、最初の週末は賑わいますが、最終的には大きくは盛り上がらず例年通りの興行収入40億円台のキープあたりだと想定されます。

「ウィキッド 永遠の約束」
「ウィキッド 永遠の約束」

来週末3月6日(金)からは洋画の期待作「ウィキッド 永遠の約束」が公開されます。

このところのハリウッド映画はとにかく調子が悪いのですが、「出来が良くて斬新な作品」には希望があります。

前作の「ウィキッド ふたりの魔女」は昨年の3月7日に公開され、興行収入35.4億円を記録しています。

この有名ミュージカルの映画化はクオリティーが高いので、前作は40億円台に乗せても良かったのですが、そこまでは広がりきれませんでした。

ただ、前編「ウィキッド ふたりの魔女」は金曜ロードショーで3月6日に放送されるので、今回の後編「ウィキッド 永遠の約束」が盛り返す可能性があります。

出来とポテンシャルを考えると、「映画ドラえもん 新・のび太の海底鬼岩城」との勝負に勝つことも起こり得るのかもしれません。

「ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編」
「ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編」

現時点ではまだ3月公開作品を全て見たわけではないのですが、春休み映画で台風の目になる可能性があるとしたら、それは3月13日公開の「ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編」なのかもしれません。

前作の「ゴールデンカムイ」は興行収入29.6億円という好成績でしたが、これが今回の続編で大きく伸びるポテンシャルを感じるのです。

前作はイントロ的な内容のため大ヒットとまではいかなかったのですが、作品の面白さが醸成されてくる意味では、今回の続編から大ヒットを記録しても不思議ではない出来栄えだったからです。

WOWOWが社運を賭けたようなプロジェクトで、前作と本作の間にある物語についてはドラマ化してWOWOWを中心に放送していたのですが、こちらも金曜ロードショーで、前作に加えて、そのドラマ化部分も映画のように編集されて2月27日(金)に放送されるのです。

個人的な感覚では前振りが丁寧なので前作だけの知識でも問題はないようには感じますが、準備万端の方が望ましいのは言うまでもありません。

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このように春休み映画前半戦の勝者は、過去の実績を踏まえると、紹介した順になるのですが、作品の出来を考えた「語りたい度数」で言うと順位が反対になる状況なのです。

この口コミの熱量を表す「語りたい度数」はポテンシャルの高さに直結するので、最終的にこの3作品のデッドヒートになる可能性があるのです。

果たして“映画業界にとって望ましい想定外な事態”が起こるのか、平時のままなのか、この辺りが春休み映画前半戦での大きな注目点になりそうです。

筆者紹介

細野真宏のコラム

細野真宏(ほその・まさひろ)。経済のニュースをわかりやすく解説した「経済のニュースがよくわかる本『日本経済編』」(小学館)が経済本で日本初のミリオンセラーとなり、ビジネス書のベストセラーランキングで「123週ベスト10入り」(日販調べ)を記録。

首相直轄の「社会保障国民会議」などの委員も務め、「『未納が増えると年金が破綻する』って誰が言った?」(扶桑社新書) はAmazon.co.jpの年間ベストセラーランキング新書部門1位を獲得。映画と興行収入の関係を解説した「『ONE PIECE』と『相棒』でわかる!細野真宏の世界一わかりやすい投資講座」(文春新書)など累計800万部突破。エンタメ業界に造詣も深く「年間300本以上の試写を見る」を10年以上続けている。

発売以来16年連続で完売を記録している『家計ノート2026』(小学館)が増量&バージョンアップし遂に発売! 2026年版では、日本において最も問題視されている「失われた30年」問題。この「失われた30年」においても貯金額を増やせる特別な方法を徹底解説!

Twitter:@masahi_hosono

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